ふわり、初恋【上林誠知】

33恋 ページ34

side◎間宮A

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夢、じゃない



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試合終わりに、ドームの裏を歩いていた


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「…あ」


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"分かる？ばやしがホームラン打った時の写真"


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これだ…巨くんが言ってた、誠知の写真
壁一面に飾られた彼は
無に等しい表情の奥で喜びを噛み締めてて
強く握られた拳と、滴る汗が綺麗


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(自分で撮った写真なのに、ね)


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こんなにも、愛しいと思うなんて
大きく映し出された誠知と目が合った気がして
顔が、どんどん熱くなる


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"好きだよ。……大好きです"

"やべー…すげぇ嬉しい"


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そっか…夢じゃないんだ
私、誠知と付き合うことになったんだ
幼なじみから、恋人になったんだ


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「いや、なんか照れちゃうな」

「お！いたいたAちゃん！」

「あっ、ギータさん」


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緩んだ頬を両手で抑えていたら
猛スピードでギータさんが正面から走ってきた
…上半身、裸のままで


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「こっち！来て！」

「え！？」

「いーから早く！」

「わっ、ちょっと！？」


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気づけばギータさんに腕を捕まれ、廊下を走る私
ってかギータさん速っ！さすが現役選手…
じゃ、なくてですね！


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「何ですかこの状況！」

「お祝いや！」

「はい！？」

「ほら、こっち！」

「わわっ…！」


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ギータさんに連れられた場所は…ロッカールーム
顔を上げれば、なぜか皆さんが集まってて
しかも、にこにこ…？いや、ニヤニヤしてて
いつの間にか輪の中心に連れてこられてた


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「ばやし！噂の彼女連れてきたぞ！」

「…誠知？」

「あ……A、」


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輪の中心には…ユニホーム姿の誠知がいて
遠慮がちに視線を送れば、横目がちにこっちを見る
多分…私にしかわからなかったと思う
一瞬、誠知がうっすらと微笑んだのは


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(え、待ってもう言ったの？)

(ごめん、ギータさんにばれた)

(…早いなぁ…)


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「幼なじみカップル誕生おめでとう！」

「いやー良かったねふたりとも」

「並んでみるとやっぱ美男美女だな！」

「運命のふたりってやつ？」

「やっとくっついたか！」


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輪の真ん中にいる私と誠知に
盛大な拍手(と指笛)が送られた
わいわいがやがや、元気なノリで
そっか、だからギータさんが


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「皆、応援しててくれたらしい」

「え！知らなかった…」

「…俺も」


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誠知と耳打ちをし合って
どちらからともなく…笑ってしまう


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「うっわラブラブ！」

「若っ！いいねぇ〜」


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あぁ…やっぱり、夢じゃない


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