鷹の広報ちゃん.5

スタートに向かって ページ32

巨side


一緒に住み始めて初めての夜…。
Aちゃんが広報部からもらった美味しいお蕎麦を一緒に食べた。

どっちが先に風呂に入るか言いあって…結局俺が先に入って…Aちゃんを待って…。



そして…慌ただしく過ぎた一日をベッドの上に座りながら振り返る。




「…Aちゃんがいる」

「…います」

「嬉しい…」

「…緊張、します。やっぱり私、自分のベッドで「だーめ。俺と一緒」



逃げようとするAちゃんを後ろから抱きしめる。
そろそろ…話さなくちゃいけないこともあるし。




「Aちゃん、このまま、聞いてほしいことがある」

「…なん、ですか」

「今日、朝、監督に呼ばれてドーム行ってたんだよね」

「え？そうなんですか？」

「そう…そこでさ、言われた」



あ、どうしよう…震えてきた。
Aちゃんにも伝わってると思う…ダメだ、震え、とまんない。




「…今年、開幕投手やることに、なった」

「…え」

「…一軍復帰、開幕に、なった」

「っ〜！」




今年も無理だと思ってた。
俺よりしっかり投げてる人はたくさんいる。
俺なんかまだまだで、一軍にいられないかもって思ってた。

それだけど…監督は、俺を指名してくれた。



「な、おさん…」

「…すぐに言ったら、Aちゃん引っ越してくるのやめるって言うと思ったから…ごめん、黙ってて」

「っ、言いますよ！そんな…大切な時期に」

「俺にはAちゃんが必要だから…絶対に、離したくなかった。傍にいてほしかった」

「っ…」

「…正直、今年の開幕はどうなるかわからない。
開催できるかもいつになるかもわからない。
でも…それでも、俺、頑張るから…傍にいてほしい」

「…巨さんっ！」



Aちゃんが俺の腕から出て…前から抱き付いてきてくれた。
急なことで耐えきれず、ベッドに2人で倒れこむ。




「っ、巨さんっ…巨さん」

「なーに」

「巨さんっ…」

「聞こえてるよ」

「嬉しい…凄く、凄く嬉しいです」

「…」

「戻ってきてくれた…」

「…遅くなっちゃったけどね」

「…私でよければ、支えたいです。
巨さんの事…支えたい、です」

「…Aちゃんがいい」

「巨さん…」

「ん？」

「…おめでとうございます」

「…ありがと」



凄く待たせてしまった。
折角もらったチャンスを…潰したくない。
Aちゃんに見てもらいたい


いつになるかわからない開幕だけど…


スタートに向かって…


(君と一緒に歩いていこう)

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