鷹の広報ちゃん.5

幸せの勘違い ページ17

昨日は、ある程度手の震えが収まってから…仕事に出た。
和子さんがずっと傍にいてくれて…ホテルに戻ってからも同室だから一緒にいてくれた。

夜に何度か起きちゃったけど…和子さんも一緒に目を覚ましてくれて傍にいてくれた。
凄く申し訳なくなった。


朝早く2人で球場入りして、今日の準備を始める。
今日もたくさんのファンの方や記者の方たちが来るからそのリストアップもしていた。




「あの…」

「は…い」

「昨日は巨の所までありがとうございました」




振り向くと昨日の綺麗な女性が立っていた。
あ…どうしよう、何言えばいいんだろう。
手が震えて…でも目の前の女性は凛々しくたっていて…自分との差を感じた。



「こ、ここスタッフだけ「巨と付き合ってるんですよね」っ…」

「練習中とか…キャンプ中少し見させてもらいましたけど、巨…無理してるように見えた」

「え…」

「私の知ってる巨は、クールで口数も少なくて…カッコよくて。
なのにあなたといる巨、無理して笑ってて、優しくしてて…あれじゃ、巨が可哀想」

「…」



そっか。そう言う事なのか。
私と一緒にいると巨さんが可哀想になってしまうのか。
そうだよね。そう言われればそうだよね。
あんなに優しくてカッコいい巨さんが私の事好きって言ってくれるはずないんだから。
無理してるに決まってる。そうだ…簡単なことなんだ。


やっぱり、巨さんは優しくて素敵だな…。




「それに、あなた襲われたんでしょ？」

「っ!!」

「巨は優しいから一緒にいてあげてるけど…汚いあなたじゃ…巨だっていつまで一緒にいてくれるのかわからないですね。
優しい巨だって、そろそろ限界なんじゃない？」

「ぁっ…」

「巨が限界になる前に…早く返して」




それだけ言って、部屋を出ていってしまった。
巨さんの優しさに頼りすぎていた。
巨さんの優しさを勘違いしていた。

そうだ…考えればわかることだ。


急に昔の事を思いだした。
あんたと一緒にいると不幸になるって言われた気がする。

そうだ…そうやって私は捨てられたんだ。
捨てられるべくして捨てたんだっけ。

巨さんにたくさん迷惑かけちゃった。謝らないと…

でも…でも、今…会って話せるかな。会ってくれるかな。


ダメだ。苦しくて何も考えられない。
最後に、大好きな人の声が聞こえた気がしたけど…



(きっとこれも勘違いなんだろう)

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