戻ってきて ページ49
「…そんなに泣かないでよ」
「ご、めんなさいっ」
「…俺こそ、ごめんね」
「いまみーさんは悪くないですっ」
いまみーさんが怪我のため、登録抹消になった。
怪我だってわかってるけど、
いまみーさんもチームも調子がいい中、
私が勝手に悔しくなっている。
いまみーさんが一番悔しいのに。
「ちゃんと戻ってくるから」
「もちろんですっ」
「もっと強くなって戻ってくるから」
「待ってますっ…」
「…泣かせて、ごめんね。
どんどん離脱してって…
Aちゃんも辛いのに…」
「辛いのは、選手の皆さんです。
私はっ…待つことしか」
「それが重要なの」
下を向いていたら頭をポンとされた。
「待っててくれる人がいる事が…
俺たちにとって…俺にとって…
頑張れる糧になるから。
Aちゃんが待っててくれないと…
戻ってこられない」
「っ…待ってます。
ずっと待ってます。
だから…戻ってきてくださいね」
「もちろん」
「いまみーさん…」
「ん？」
「私、泣かないようにします」
「急にどうしたの」
「前に、うっちーさんから、
私が泣くたびにいまみーさんが心配してるって」
「そりゃね…俺にとったら妹みたいなもんだし。
泣いてたら心配になるでしょ」
「泣かないように…いまみーさんを待ってます」
「…泣いていいよ」
「ダメです」
「泣かないとAちゃんがダメになる」
「私は…」
「ホークスはAちゃんの味方だから。
仲間だから…ね？」
「…いまみーさん！」
「はいはい。ちゃんといい子で待っててね。
辛かったら誰かに言うんだよ」
「はいっ」
「巨さんにもしっかり言うように」
「っ！？」
「返事は？」
「は、い…」
「ん、じゃあ…またね」
「また…」
何度もこうやって離脱していく人の背中を見た。
寂しいどころじゃない。
戻ってくると信じて待っている。
それが私の仕事だから。
でも…もし、戻ってこなかったら？
もし…このまま…。
戻ってこない人だって…いる。
それが現実なのだけれど、
受け入れられない。
大丈夫。皆戻ってくる…
そう何度も言い聞かせて、何度も自分を納得させる。
いまみーさんだって、戻ってくるって言ってくれた。
私は待ってる。
いまみーさんが…皆が戻ってきてくれることを。
「よしっ…泣くな、私」
泣いてばかりじゃダメだって。
強くならなくちゃって…
次に会う時。成長しているように。
(そう言い聞かせながら)
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作者名：ゆき | 作成日時：2019年3月12日 17時
