出会ってくれて ページ5
巨side
「…小学校に上がってすぐでした。
家に帰ったら…空っぽでした」
「っ…」
「…両親からは待ってて。
って言われることが多かったので…
待ってたんですが、帰ってこなかったです」
ｰｰｰ待つのは得意ですｰｰｰ
以前Aちゃんが言っていたこの言葉の意味を、
今…理解した。
「それからは、あまり覚えていないですけど、
福岡にいた祖母に引き取られて…
そこから祖母と一緒に暮らしてました」
「そ、なんだ…」
「…でも、私が、職員になって少し経って…
祖母は、亡くなりました」
「…じゃあ、そこからは」
「はい、一人です。
親戚はもちろんいます。
仲は悪くないんですけど…
少し、話しずらくて…」
「…そっか」
「…すみません、こんな事」
「教えてくれてありがとう」
「巨さん…」
「ねぇ、Aちゃん」
「はい…」
「…抱きしめても、いい？」
「っ！？」
俯いていたAちゃんは
勢いよく俺の方を見た。
あぁ、目が赤い…。
「今、凄く抱きしめたい」
「巨さん！？」
「…だめ、かな？」
「…だめ…じゃ、ないです」
小さい声でそう言ってくれた。
赤いのは目と顔になった。
少し近くによって、Aちゃんを抱きしめる。
「…Aちゃん」
「は、い」
「…なんて言えばいいか、わからない。
ごめんね…」
「なんで、巨さんが謝るんですか…」
「でも、これだけは言いたい」
「…？」
「…出会ってくれて、ありがとう」
「っ…な、おさん」
「俺は、ここにいる」
「巨さんっ」
「俺は…ずっとAちゃんの隣にいるよ」
「あっ…」
「信じて、俺を」
これだけ、待たせて…
付き合ってもないのに何言ってんだろうって…
自分でも思う。
でも…それでも、
俺はAちゃんに伝えたかった。
涙を流しながら、俺の腕の中で小さく震えている。
「巨さんっ」
「ん？」
「巨さん…っ」
「んー？どした？」
「…っ巨さん」
「そんなに呼ばなくてもいるよ」
「…うぅ」
「いいよ、泣いて…」
「わ、私っ…」
「ん？」
「…ホークスがいてくれて…
巨さんがいてくれて…本当に、よかったっ」
そう言われて、俺はどうすればいいのだろう。
好きな人が…俺がいてよかった。
そう言ってくれて…こんなにも嬉しいことはない。
力いっぱい、抱きしめた。
「Aちゃんっ…」
「…痛いです」
「ごめんっ…」
「…んふふ」
「やっと笑った」
「…ありがとうございます」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 546人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆき | 作成日時：2019年3月12日 17時
