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雨の熊本 ページ33

甲斐side



「Aちゃん、顔顔」

「…普通です」

「Aちゃんの真顔とか、
怖くて仕方ないから」

「甲斐君…私は、なぜ熊本にいるのでしょうか」

「仕事ですね」

「ファームにいたのですが」

「一軍合流ですね」

「ヤフオクドームは」

「お留守番組ですね」

「私は」

「一軍合流で、熊本ですね」

「…」

「…諦めなって。
それより、雨ひどいから…
風邪ひかないようにね」

「甲斐君がだよ。
体調悪かったら言ってね」

「いやいや、Aちゃんがだから」

「私の替えは誰でもできるけど、
捕手の甲斐は、甲斐君しかいないよ」

「…捕手はたくさんいるよ」

「いるね。でも、その中でも、甲斐君がいないとだめ」

「…でもさ、俺…」

「高谷さんとか九鬼くんとか栗原くんとか…
確かに捕手入るけれど、甲斐君がいてこその、
ホークスの捕手陣だと私は思ってる」

「…」

「だから、体調悪くなったら言ってね」

「Aちゃん…」

「ん?」

「俺、頑張る」

「私も」

「…頑張ろうね」

「うん」



ベンチから雨のグラウンドをみる。
気温も下がってきて、肌寒くなる。

あ、肌寒くなると言えば…



「Aちゃん、待ってて!」

「え、甲斐君!?」



ロッカーにダッシュして、
あるものを手に取り戻る。



「はい、これ」

「え、これ」

「はい、腕通して…前閉めて…
完璧。俺いい仕事した」

「え、ちょっとこれ…」



Aちゃんは袖に書かれている数字を見て、
さっきの真顔から一転、大慌てな顔になる。



「そう、巨さんの」

「な、なななななんで!」

「え、何かあったらこれ着せておいてって」

「なんで!?」

「マーキングじゃない?」

「ここに巨さんいないからって、
熊本のファンの方は巨さんの事忘れませんよ!」

「そうじゃない」

「?」

「まぁ、いいや。
今日、それ着てて」

「嫌だ!」

「お願い!」

「なんで!」

「なんで…それは、俺が…
福岡に戻っても命が欲しいから」

「…どういう事」

「なんでもない。
とりあえず、そのまま!」

「で、でも…
巨さんの香りがする」

「いいじゃん」

「…傍にいないのに、
傍にいる見たいで…泣けてくる」

「え、ごめん…
そう来るとは思ってなかった」

「うぅ」



その後、泣いている姿を慶三さんに撮られ
巨さんに送られ、


『甲斐は戻ってきたら状況説明よろしく』


という恐怖の連絡が来ていた。


(あぁ、雨と共にこの状況も流れないかな)

次の日の福岡→←いつでも君に



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作者名:ゆき | 作成日時:2019年3月12日 17時

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