行ってきます ページ30
「今回の遠征は帯同しないで、
ファームに行ってほしい。
というか…すぐに行ってほしい」
「…ファーム？」
「ファームって知ってる？」
「知ってます！」
「じゃあ、よろしく」
野手のミーティングが終わった後に、
突然広報さんから告げられたファーム行き。
内「え、なんで？」
広「ファーム担当の人が、
体調不良で1週間不在になっちゃって…」
松「えー、Aちゃん来ないんか〜」
今「なんか久しぶりだ。
Aちゃんのいない遠征」
「確かに…そうですね」
広「まぁ、ちょっとけが人も多くて、
ファームにいる人多いから…
元気づけてきてよ」
松「ええんか、巨」
巨「俺ですか？
行くなと言っても…どうにもならないし」
慶「え、だってあっちには若手もいるんだぞ？
もし、Aちゃんが…」
巨「まぁ…」
松「心配じゃないのか！」
巨「…心配じゃないわけ…ないっすよ」
むすっとした顔で言う巨さんに…
見とれてしまった。
珍しい…と言うか、初めて見た気がした。
「な、巨さん！」
巨「ん？」
「私、巨さんしか見えません！」
巨「…」
「だから、ファーム行ってきますね」
巨「…うん、いってらっしゃい」
慶「俺が求めていた展開と違う」
今「まぁ、円満がいいんじゃないっすか」
そんな話をしながら、私はすぐにファームに行く準備をする。
1人で荷物をまとめていると…
「Aちゃん」
「巨さん…どうされました？」
「ん、なんか会えなくなると思うと…
少し寂しいなって思って」
「っ、あの、」
「1週間会えないの久しぶりだから」
「そう、ですね」
「油断しちゃダメだから」
「しません！ちゃんと打球には気を付けます」
「そうじゃなくて…」
「大丈夫です」
「本当かな」
「はい！」
「その返事が不安なんだって…Aちゃん」
「はい」
巨さんは、私の腕を引っ張り…
抱きしめてくれた。
「な、巨さん？！」
「野球選手として見るのはいいけど、
俺の事も忘れないでね」
「もちろんです！」
「…電話、してもいい？」
「…はい」
「何かあったらAちゃんも電話してね」
「はい」
「…やっぱり何もなくても」
「巨さん」
「…なに？」
「私は、巨さんが好きですよ」
「…俺も」
巨さんが何を不安に思っているかはわからないけど、
今、伝えたくなったので伝えてみた。
そしたら、巨さんは笑ってくれた。
(久しぶりのファームへ行ってきます)
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作者名：ゆき | 作成日時：2019年3月12日 17時
