知らなかった ページ3
巨side
秋キャンプも終わりを迎えるころ…
いつもいるAちゃんがいないことに気がついた。
また裏で仕事してるのかな?
と思いつつ、広報さんに聞いてみる。
「あの、Aちゃんって今日いないんすか?」
「あぁ、今日休み」
「休み?体調悪いとか?」
珍しい…。
Aちゃんが休むなんてなかった気がする。
「いや、違うよ。
おばあさんの法事だって」
「…あぁ」
「さすがに行けって言ったわ。
Aちゃん、親もいないし…
おばあちゃんの所で育ったみたいだしね」
「…ん?」
さらっと重い話をする広報さん。
和「…それ、言っちゃダメだと思います」
広「え?」
和「さすがにプライベートすぎます」
広「え、そうなの?
Aちゃん、そんなに重そうに話てなかったから…
むしろ、知ってると思ってた」
和「休みの理由を事細かに聞くからですよ」
広「俺のせいか?」
和「はい」
和子さんもため息を漏らしている。
巨「…知らなかった」
確かに、話は聞いた事ない。
まぁ、この歳で親の話することもないし…。
出身地の話くらいだけど…
生まれは関東、育ちは福岡しか聞いた事なかった。
広「まぁ、明日には帰ってくるから…
何か用事があるなら明日にすれば?」
巨「…」
俺は、何を見ていたのだろう。
俺は…Aちゃんの何を…知っているのだろう。
その日の練習では、
ふとした時に考えるのはAちゃんのこと。
今何をしているのだろう。
何を考えているのだろう。
基本的にはずっと一緒にいるから…
離れたことがないから、こう離れると…
寂しくて仕方ない。
グラウンドの中でAちゃんを探す。
「いない…」
Aちゃんがいない…それだけで、
俺はこんなにも不安定になるのか。
ホテルに帰っても、部屋にいても…
やはり考えることはAちゃんのこと。
あぁ、俺の中でAちゃんは
こんなにも大きな存在になっていたのか。
ふらっと部屋を出てみると…
「…Aちゃん?」
「巨さん!?お疲れ様です!」
凄く偶然…偶然、Aちゃんに会えた。
いつもみたいに大きな荷物は抱えてなくて、
ラフな格好をしたAちゃんだった。
「…遅い時間にどうしたの?」
「あ、少し和子さんに用事がありまして…」
へへ。と笑うAちゃん。
会えると思っていなかったから…嬉しいけど、
Aちゃんが少し、元気がないような気がした。
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作者名:ゆき | 作成日時:2019年3月12日 17時