∬033 ページ35
コンコン、と扉をノックする音。
Aは部屋着のワンピースをひらひらさせながら駆け寄る。
「王さまの耳は?」
「ロバの耳」
「……入って!」
ディオの腕を引くと、扉をすばやく閉めた。
はじめての泥棒がうまくいったみたいに、コソコソと笑いあう。
二人だけに夜の幕があがった。
「君の本棚って、恋愛小説が多いな」
「興味ある? 自由に読んでいいわよ」
Aがベッドに寝そべりながら言う。
「いや、画集にするよ」
恋愛小説なんて女の読み物だ、というプライドは心の中に置いといて、彼女のとなりに腰を下ろした。
「そういえば、あそこの壁にかかっている額……」
「ああ、気づいた? ディオが私に初めてくれたプレゼントだから――」
額縁の中に、薔薇の花びらが二枚、ハートの形を取るようにして飾られている。
「そのまま枯らしてしまうのはもったいなくて、押し花にしてみたの」
「へえ、そこまで大切にしてくれてたなんて嬉しいな」
「それだけじゃないのよ?」
Aは枕のしたを手探りする。
「あった!」と言うと、握ったこぶしの中を見せてきた。
「それって……」
「ええ。オペラを観にいった帰り、パブでチェスをしたでしょ」
それは塔の形をした――チェスの駒――白のルークだ。
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推しの命は私の命 - ジョナサン空気( ゚இωஇ゚) (10月15日 15時) (レス) @page43 id: 0046fb2d1c (このIDを非表示/違反報告)
油電(プロフ) - 黒猫歳花さん» コメありがとうございます…!そう言っていただけて嬉しいです(*´ω`)これからも、胸に刺さるキュンキュンを目指しながらお送りしますッ (2018年5月4日 23時) (レス) id: 95fd139937 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫歳花(プロフ) - はじめまして、この作品を読んでいるとディオにキュンとしっぱなしで楽しいです!これからも頑張ってください(*^▽^*) (2018年5月4日 20時) (レス) id: ae43b29bb1 (このIDを非表示/違反報告)
油電(プロフ) - おバカな傀夢さん» ありがとうございます笑 ディオのキャラが崩壊していないか不安でもあります(汗)お話も中盤にさしかかって参りました…! 引き続きよろしくお願いします(*^-^*) (2018年5月4日 12時) (レス) id: 95fd139937 (このIDを非表示/違反報告)
おバカな傀夢(プロフ) - おおっ!?やっと…やっと気が付いたかッ!ディオ〜!!大好きだ〜!!油電様も大好きです笑 (2018年5月3日 22時) (レス) id: 5ff30031ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:油電 | 作成日時:2018年4月1日 21時