∬016 ページ17
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チェスをしている隣の席から「チェック」という声がした。
負けたほうの男性は「おまえには敵わないな」といいながら、銅貨5枚をテーブルに置いて立ち去る。
Aはそれを見てワクワクした。私もチェスで賭けてみたい、と。
男のそばに立ち、「ねえ おじさん、私とチェスしない?」
「コラ A、やめんか」
男はAたちの小奇麗な身なりを見るなりムッとして、手で追い払った。
「ガキは親のところに帰りな!」
Aはわざとらしく「戦わずして勝っちゃった」と大きな独り言。
男はさらにムッとして「フンッ! かかってきやがれ」とゲームを承諾した。
Aは銀貨1枚をテーブルに置く。男は目を光らせた――(この金持ちのガキ、いいカモだぜ!)
「オレは黒の駒、お嬢ちゃんは白の駒だ」
「ええ」
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続々と失っていく白の駒――ポーン、ナイト、ビショップ、クイーン……
男は「フフフ」と不敵な笑み。
「チェックだぜ、お嬢ちゃん」
あっけない――Aは盤上の黒い駒を睨んだ。
「この銀貨はありがたく頂戴するぜ」
席を立とうとした男にディオが近づく。
「ぼくと勝負しないか」
ディオはポケットの中から銀貨を1枚取り出すと、男に見せた。
男はニヤリと笑い、ディオを席に座らせた。
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《15分後》
ディオはポーカーフェイスを崩さず、淡々とした手つきで駒を動かす……盤上の白に黒が負けていた。
男は爪を噛む――ディオは、塔の形をした白のルークで、華麗にキングの逃げ道を塞いだ。
「チェック」
「くッ」
男は盤上の駒を手で薙ぎ払い、Aの銀貨をテーブルに叩きつけて店を出た。
ディオは銀貨を手に取ると、「あの男、君のお金を落として行ったよ」とユーモアを交え、彼女の前に差し出した。
Aは感極まってディオの手を握る!
「 !? 」――(この女……!)
「すごい! すごいわ! ディオ!」
Aの瞳はキラキラしていた――新しい場所へ行くみたいに。
そして足元には――白と黒――チェスの駒たちが 無秩序に散りばめられていた。
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推しの命は私の命 - ジョナサン空気( ゚இωஇ゚) (10月15日 15時) (レス) @page43 id: 0046fb2d1c (このIDを非表示/違反報告)
油電(プロフ) - 黒猫歳花さん» コメありがとうございます…!そう言っていただけて嬉しいです(*´ω`)これからも、胸に刺さるキュンキュンを目指しながらお送りしますッ (2018年5月4日 23時) (レス) id: 95fd139937 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫歳花(プロフ) - はじめまして、この作品を読んでいるとディオにキュンとしっぱなしで楽しいです!これからも頑張ってください(*^▽^*) (2018年5月4日 20時) (レス) id: ae43b29bb1 (このIDを非表示/違反報告)
油電(プロフ) - おバカな傀夢さん» ありがとうございます笑 ディオのキャラが崩壊していないか不安でもあります(汗)お話も中盤にさしかかって参りました…! 引き続きよろしくお願いします(*^-^*) (2018年5月4日 12時) (レス) id: 95fd139937 (このIDを非表示/違反報告)
おバカな傀夢(プロフ) - おおっ!?やっと…やっと気が付いたかッ!ディオ〜!!大好きだ〜!!油電様も大好きです笑 (2018年5月3日 22時) (レス) id: 5ff30031ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:油電 | 作成日時:2018年4月1日 21時