∬015 ページ16
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公演が終わり劇場を出ると、外はすっかり夜になっていた。
街灯の下を歩きながら、誰かが『キュルルル』とお腹を鳴らす――「おや、」とジョースター卿。
Aの耳がカッと熱くなった――(やだ……! 私ったら、はしたないッ)
彼女の隣を歩いていたディオは、それに気づくと、わざとお腹に手を当てて申し訳なさそうに言った。
「すみません お父さん。初めて見るオペラに夢中になっていたから、もう お腹がペコペコで……」
ジョースター卿はハハハと笑う。
「構わんよ。わたしもちょうどお腹が空いたところだ。何か食べてから帰るとしよう」
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四人が入った店は、庶民的な雰囲気のパブ(酒場)。
店内はガヤガヤとうるさく、上流階級の服装は痛いほど目立った。
カウンターのバーテンダーに注文を取る――『フィッシュ&チップス』
≪白身魚のフライに、ポテトフライやグリンピースを添えた労働者階級の定番料理!!≫
料理の乗った皿を受け取ると、空いてる木のテーブルまで行き、席に着いた。
隣のテーブルでは、男性客二人がチェスで賭けをしている。
ジョースター卿、ジョナサン、Aの三人は、人生で初めて『フィッシュ&チップス』という庶民の食べ物を口にした。
Aはフォークを静かに下ろす。
――(このフライ、油でギトギトだわ……! 貧しい人たちはこんな料理を毎日……)
Aは少しショックを受けた。と、同時に、自分がお嬢様であることにホッとした。
ディオのほうを見る。
「……ねえ、美味しい?」
「ああ。懐かしいよ」
すると、ジョースター卿はやさしく微笑んだ。
「ディオの生まれ故郷に来たのだ。たまには家庭の味を思い出すのもよいだろう」
『家庭の味』――その言葉が一瞬 ディオの神経に触れたが、彼は水の入っているコップをグッと握りしめて堪えた。
「はい、お心遣いありがとうございます」
涼しい笑みを返してから水を飲む。
――(『家庭の味』だと? ふざけるなッ! 母は幼いころに亡くし、クズの親父は毎日飲んだくれ…………こんな不味いもの今さら食えるかッ!)
ディオは続けて考えた――(しかし、怒りっぽいという自分の欠点は乗り越えなくてはな。態度では平常を保てても、心の中が冷静でなくては意味がない。よりもっと自分の心をコントロールできるように成長しなくては……)
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推しの命は私の命 - ジョナサン空気( ゚இωஇ゚) (10月15日 15時) (レス) @page43 id: 0046fb2d1c (このIDを非表示/違反報告)
油電(プロフ) - 黒猫歳花さん» コメありがとうございます…!そう言っていただけて嬉しいです(*´ω`)これからも、胸に刺さるキュンキュンを目指しながらお送りしますッ (2018年5月4日 23時) (レス) id: 95fd139937 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫歳花(プロフ) - はじめまして、この作品を読んでいるとディオにキュンとしっぱなしで楽しいです!これからも頑張ってください(*^▽^*) (2018年5月4日 20時) (レス) id: ae43b29bb1 (このIDを非表示/違反報告)
油電(プロフ) - おバカな傀夢さん» ありがとうございます笑 ディオのキャラが崩壊していないか不安でもあります(汗)お話も中盤にさしかかって参りました…! 引き続きよろしくお願いします(*^-^*) (2018年5月4日 12時) (レス) id: 95fd139937 (このIDを非表示/違反報告)
おバカな傀夢(プロフ) - おおっ!?やっと…やっと気が付いたかッ!ディオ〜!!大好きだ〜!!油電様も大好きです笑 (2018年5月3日 22時) (レス) id: 5ff30031ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:油電 | 作成日時:2018年4月1日 21時