∬012 ページ13
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Aは座っているディオを見つけると、何も喋ることなく、ソファのすぐ後ろにあるカーテンの中へと隠れた。
それからすぐ、ハァハァと息を切らした家庭教師がディオの前に現れた。
「…………」
「ディオさん、お嬢様を見かけませんでしたか?」
Aは厚いカーテンの中で息を殺し、唇を噛んだ。
「いいや、見てないな」
「そうでしたか、失礼……
おかしいわねェ。たしかにこっちに上がっていったはずなのに……」
家庭教師は背中を向けて去っていく。
ディオは再び本に視線を戻す。
「…………もう行ったよ」
Aはカーテンに挟まりながら顔を出すと、ディオの後頭部を見つめた。
「ありがとう、ディオ。あんたって優しいのね……今日はディオに二度も助けられちゃったな」
ディオは本から目を離さず、「なんてことないよ」とだけ言った。
クールな彼に、とっておきのお礼を思いつく。
「ねぇ、ディオ……」
ディオはAの呼びかけに反応して カーテンのほうを振り向いた。
「何だい、A」
Aはカーテンを背に 伏し目がちに言う。
「……あんた、女の子とキスしたこと まだ無いんでしょう?」
――(この私が『女の子の唇がどんなに柔らかいものか』、特別にあなたに教えてあげてもいいわ。私も初めてだけど……ディオのファーストキスは『私』になるの)
『女の子とキスしたことがあるか?』――ディオの回答はとても短いものだった。
「いや……?」
「 !!!! 」
Aは唇を堅く結びカーテンを勢いよく下に引っ張った。
「 !? 」
ディオが咄嗟にソファから立ち上がると、彼女は腹から言い放った。
「ずいぶん大人なのねッ!」
クルリと背を向けて階段を下りて行った。
――(しまった! 機嫌を損ねたかッ! リードするために本当のことを言ったのだが……面倒くさい女だな……)
ふと窓のほうを見る。
Aが引っ張った部分のカーテンは、レールから外れ、だらしなく垂れ下がっていた。
ディオは再びソファに腰かけると、肘かけにもたれかかり、足を組んだ。
片手に持った本に軽くため息をつく。
「仕方ない、あとで召使を呼びにいくか……」
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推しの命は私の命 - ジョナサン空気( ゚இωஇ゚) (10月15日 15時) (レス) @page43 id: 0046fb2d1c (このIDを非表示/違反報告)
油電(プロフ) - 黒猫歳花さん» コメありがとうございます…!そう言っていただけて嬉しいです(*´ω`)これからも、胸に刺さるキュンキュンを目指しながらお送りしますッ (2018年5月4日 23時) (レス) id: 95fd139937 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫歳花(プロフ) - はじめまして、この作品を読んでいるとディオにキュンとしっぱなしで楽しいです!これからも頑張ってください(*^▽^*) (2018年5月4日 20時) (レス) id: ae43b29bb1 (このIDを非表示/違反報告)
油電(プロフ) - おバカな傀夢さん» ありがとうございます笑 ディオのキャラが崩壊していないか不安でもあります(汗)お話も中盤にさしかかって参りました…! 引き続きよろしくお願いします(*^-^*) (2018年5月4日 12時) (レス) id: 95fd139937 (このIDを非表示/違反報告)
おバカな傀夢(プロフ) - おおっ!?やっと…やっと気が付いたかッ!ディオ〜!!大好きだ〜!!油電様も大好きです笑 (2018年5月3日 22時) (レス) id: 5ff30031ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:油電 | 作成日時:2018年4月1日 21時