ふたりきりの帰り道（デュース） ページ7
夕日がだんだん地平線に沈んでいって、空が燃えるみたいな夕焼け色になる。今日ももう終わりかかっている。「また明日」と言わなきゃいけない時間がすぐそこに迫ってきている。それが何よりも、嫌だった。
帰り道をふたりで並んで歩いて、オンボロ寮の前まで来ると、Aは「それじゃあ、また明日」と言って、僕に背を向けて帰ろうとする。いつものことなのに、なぜか今日だけはそれがすごく、すごくすごく惜しいことのように思えた。
「っ、待ってくれ！」
咄嗟にAの手を掴むと、Aが驚いたような顔をして僕を見る。Aの不思議そうな目に見つめられると途端にどうしたらいいのかわからなくなってしまって、自分から掴んだくせに手に汗が滲んでくる。
僕のこの行動には、特にはっきりとした理由はなかったと思う。ただAが帰ってしまうのが無性に惜しくなっただけだった。少しでもいいから、僕の隣に引き留めておきたかった。そのまま離れたくなかった。なんの根拠も理屈もない、そういう衝動でしかなかった。
掴んだままの手からAの体温が伝わってくる。緊張で顔が熱くなる。
「…………A、」
好きだ。
それを口にした瞬間、世界に誰もいなくなったみたいに辺りが静まりかえった。口をついて出たその３文字が、しんとした空気にとけて消えていくみたいだった。
ああ、本当なら、こんな格好付かない伝え方をするつもりじゃなかったのに。帰り際になって「待ってくれ」だなんて子供みたいな我儘を言って、焦るみたいに手を掴んで、自分の気持ちをぶつけて、それで、それだけだった。やっぱり僕には、ドラマみたいな劇的な告白だとか、ロマンチックな愛の言葉だとかは無理だったみたいだ。無計画に行動して、感情のまま突っ走って、それで終わり。結局僕はどうしようもなく馬鹿なんだ。
しばらくの沈黙のあと、Aが僕の名前を呼んだ。そこでやっと時間が動き出したみたいだった。Aは僕をまっすぐ見つめて、口を開いた。
「……わたしも。好きだよ」
Aはそう言って微笑んで、僕の手をやさしく握り返した。夕日に照らされたAの笑顔は綺麗で、僕は魔法にかけられたみたいにAから目を離せなかった。それくらい僕は単純だった。
「また明日」と言わないままで、僕たちはずっと手を繋いでいた。地面に伸びたふたつの影が重なりあっていた。帰らない帰り道で笑いあう僕たちは、世界にふたりきりだった。
Egoism （ヴィル）→←ライフイズビューティフル（ルーク）
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タカマツ(プロフ) - ステラさん» リクエストありがとうございます！頑張って書かせていただきます！ (4月8日 22時) (
レス) id: 2b6c41affa (このIDを非表示/違反報告)
ステラ(プロフ) - リクエストでヴィル様のヤンデレで書いて下さい！ (4月8日 17時) (レス) id: 77f430fdd5 (このIDを非表示/違反報告)
タカマツ(プロフ) - クッピーさん» たくさんお褒め頂きありがとうございます！いつも励みになっております！フロイドくん、シルバーくん、ロロくんの３話は元々サイトと支部の方に載せていたもので、それをそのまま持ってきました。それとリクエストありがとうございます！頑張って書かせていただきます！ (4月6日 20時) (レス) id: 40ebf0ac6e (このIDを非表示/違反報告)
クッピー - 最高の作品ありがとうございます。短期間でこんな数の作品を作り、その上作品にドロっとしたヤンデレ感を入れつつ、キャラクターの特徴をここまで再現するのはすごいです。もしも良ければ、リクエストで、クルーウェル先生をお願いしたいのですが、よろしいでしょうか？ (4月6日 14時) (レス) @page17 id: fd40d0f1db (このIDを非表示/違反報告)
タカマツ(プロフ) - クッピーさん» リクエストいただきありがとうございました！いつも温かいコメントをくださってありがたいです…！頑張ります！ (4月6日 0時) (レス) id: 40ebf0ac6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：タカマツ | 作成日時：2024年2月12日 23時
