けだもの（レオナ） ページ1
Aをベッドに押さえつけるのは簡単だった。適当な理由に騙されてまんまと俺の部屋についてきたこいつは、まあ、お人好しと言うべきか愚かと言うべきかもわからないがともかく、今まで他人に騙されたことがないのかと疑いたくなるほど俺という他人を信用しているようだった。
「うぅ、やだ、はなして、いやだ、」
「そんなに嫌がるなよ、悲しくなるだろ」
すっかり俺に怯えきったAの体を組み敷くと、弱っちい腕や足を必死にばたつかせて必死に抵抗してくる。こうすれば俺から逃れられるとでも思っているのか、まるで捕食される寸前の小動物みたいにばたばたもがいていてひどく哀れだ。それがさらに俺を興奮させるとも知らないんだろう。Aが泣きそうな顔でかわいらしく俺を見上げてくるものだから、思わず食らいつきたくなってしまう。
Aの口の周りをべろりと舐ると、Aが身をよじらせて嫌がるような動きをする。Aのくちびるに自分の口を押し当てて、さも恋人同士がするように、当然のようにそこに舌を滑り込ませ、Aの舌と俺の舌とを絡め合わせる。互いの唾液を交換して、歯列をなぞる。酸素が足りなくなってきた頃にようやく口を離すと、酸欠のせいか多幸感のせいか、頭がぼんやりとして何も考えられなかった。
しかし無理矢理キスをしようと、服を破いて裸にしようと、Aは俺の舌を噛んだり、背中を引っ搔いたりということはしなかった。それをどこかでわかっていた。
こいつはそういう人間なのだ。何をされても人を傷つけられない、馬鹿らしくなるくらいやさしい女。いっそのこと終わらせてしまいたい。
Aを抱きしめて、牙も爪もないやわらかい体をなぞると、こいつの体には人を傷つけるための器官などないのだとつくづく思い知らされる。全てを受け入れてしまう体。それに沈みたい。溺れたい。とかされたい。お前以外のことを考えたがらないこの脳味噌はもうとっくにおかしくなっちまってるんだ。お前が俺を狂わせたんだ。この苦痛も逡巡も執着も全部お前のせいだ。
そうしているうちに、どちらのものかもわからなくなった唾液が口の端から溢れ、Aの頬を滑り落ちた。ああ、…愛してる。俺は世界で何億回と使い古された愛の言葉を囁いた。Aは何も言わないまま、虚ろな目で虚空を見ていた。どうかここから無事に帰れますようにとでも星に祈っているのか。その祈りも希望もこれから全部、俺だけで塗り替えられればいい。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 19人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
タカマツ(プロフ) - ステラさん» リクエストありがとうございます！頑張って書かせていただきます！ (4月8日 22時) (
レス) id: 2b6c41affa (このIDを非表示/違反報告)
ステラ(プロフ) - リクエストでヴィル様のヤンデレで書いて下さい！ (4月8日 17時) (レス) id: 77f430fdd5 (このIDを非表示/違反報告)
タカマツ(プロフ) - クッピーさん» たくさんお褒め頂きありがとうございます！いつも励みになっております！フロイドくん、シルバーくん、ロロくんの３話は元々サイトと支部の方に載せていたもので、それをそのまま持ってきました。それとリクエストありがとうございます！頑張って書かせていただきます！ (4月6日 20時) (レス) id: 40ebf0ac6e (このIDを非表示/違反報告)
クッピー - 最高の作品ありがとうございます。短期間でこんな数の作品を作り、その上作品にドロっとしたヤンデレ感を入れつつ、キャラクターの特徴をここまで再現するのはすごいです。もしも良ければ、リクエストで、クルーウェル先生をお願いしたいのですが、よろしいでしょうか？ (4月6日 14時) (レス) @page17 id: fd40d0f1db (このIDを非表示/違反報告)
タカマツ(プロフ) - クッピーさん» リクエストいただきありがとうございました！いつも温かいコメントをくださってありがたいです…！頑張ります！ (4月6日 0時) (レス) id: 40ebf0ac6e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：タカマツ | 作成日時：2024年2月12日 23時
