無感情ブラックⅡ【刀剣乱舞】 (ページ5)

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　薬研様は疲れきったようにため息をつくと、紅潮した頬を撫で回しながら私の隣に来た。「なんだって会話の内容まで細かくいわなきゃなんねェんだ。勘弁してくれよ、大将」すっかり落ち着いた様子の薬研様は、ぶすくれた表情で刀を仕舞う。

　まさか、薬研様にこんな過去があったとは思いもよらなかった。では昨夜のあの熟睡は、ようやく安息の地につけたことによる安堵、ということだろうか。意識だけとはいえ、破片に囲まれては休息もままならなかったはずだ。どっと疲労が来た、というところだろう。

「一期様と乱様のことは把握しました。……では次に、大和守様がなぜここにいらっしゃるのか、お尋ねしてもよろしいですか。……あと、あなた様のお名前も……」

「か、加州、清光だよ。はじめまして、審神者サン」

「ちょ、清光……！」

　大和守様の影に隠れるように、こそっと自己紹介した神様は、どうやら加州清光様というらしい。不安げな赤い瞳と、半端に切れた長い黒髪が特徴的だ。

　おそるおそるこちらを見上げる加州様に、大和守様は咎めるような視線を送ったが、逆に加州様に咎め返されてしまったようだ。キッとこちらを睨んで、不承不承口を開く。

「清光が！ ……水飲みたいっていったから。だから厨に来たんだ。それだけだよ」

「お、俺は、安定が遅かったから……様子を見に来た」

「そうですか。成程……」

　いい争いをしているところに突っ込んで、血を見てタガが外れてしまったというところだろうか。警戒心は消えないが、こちらもだいぶ落ち着いたようだ。

　問題は……

「一期一振様」

「……はい」

「なぜ、彼に斬りかかるような真似を？」

「弟を、折るといわれたのですから、そうなるのは、兄として当然でしょう」

「彼も弟ですが」

「関係ありません」

　虚ろだ。

　魂が抜けてしまったように、ぼんやりとこちらを見ている。

「……では、乱様。なぜ、薬研様を拘束したのですか？」

「だってえ、どっか行っちゃうと思ったんだもの。……ねえ、別にボク、なんにも悪いことしてないでしょ？むしろ謝って欲しいんだけど！あーんなにひどいこといわれたの、この薬研が初めてだな！」

「確かに、その点については薬研様が悪いですね。喧嘩していたとはいえ、いっていいことと悪いことがあると思います」

「……いや、べつに喧嘩ではないんだけどな……」

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