無感情ブラックⅡ【刀剣乱舞】 (ページ4)

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「やめろ、薬研」

「大将が俺っちを顕現してくれたときは、思わず叫びたくなるくらい身体が震えたよ。……あの人が、俺っちを救ってくれたんだ。たとえそれが、大将の意図しないものだったとしても」

「……やげん、」

「なあ乱、おまえはわからないだろうな。俺っちがどんな想いで兄弟の破片を受け止めていたか。顕現されたとき、どんなに……泣きたくなるくらい嬉しかったか。……おまえがどんなに苦しんだかなんて、そんなの知らねえよ。興味もない。おまえが自分の主を殺したいってんなら、そんなの勝手にすればいい。勝手に殺して、勝手に堕ちればいい。……ただ、その過程であの人を傷つけるってんなら、俺は容赦しないぜ。そのお綺麗な肌を切り裂いて、一切の躊躇もなく折って──」

「やめろッ!!」

　突如、いち兄が斬りかかってきた。乱はその剣幕に思わず手を離し、俺っちはその隙をついていち兄をいなす。その際、刃がわずかに手首を掠め、辺りに赤が舞う。その赤は勢いに乗り、大声に駆けつけてきた大和守安定の顔にかかる。大和守は激昴し、俺っちに刃を向ける。そうしたところに、大将が扉を開けて入ってきて──

「……そんな経緯だ。これで満足かい、大将」

「ええ。凡(おおよ)そ把握しました。後半は、すこしかなり端折(はしょ)られているような気もしますが」

　まあ構いません、と大将が頷く。俺っちは気恥しさに肩をすくめたまま、むっつりと唇をつぐんで立ち尽くした。先程までの怒りはどこへやら、今は羞恥で全身埋め尽くされている。

　まさかこんな形で、自分の事情を暴露することになるとは思わなかった。曖昧に濁そうとすると、どこからともなく大将の有無をいわさぬ視線が飛んでくるのだ。ずるずると吐露していって、最終的にすべて話してしまった。乱の同情的な視線が痛い。

　ああまったく、今日はなんて日だろうか。

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