無感情ブラック【刀剣乱舞】 (ページ46)

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「少し話をしようか」

　朗らかな笑顔とは裏腹に、その言葉はひどく淡々と部屋に響いた。冷や汗が頬をつたい、ぽつんと畳(たたみ)に吸い込まれていく。

　生唾を飲み込んだ音が、やけに大きく聞こえた。

「話ってなんだ？いち兄」

　長い時間をかけて絞り出した言葉は、やけに空々しく俺たちを取り囲んだ。努めて明るくした声色も、今となってはどうにも上ずったようにしか聞こえない。

　舌打ちをしたくなるような気持ちで、俺っちはじっといち兄を見据える。いち兄はニコニコと笑みを絶やさぬまま、「大した事ではないが」と首を傾げた。

「ここで話すにはどうにも気が引けるんだ。……それに、ほら。まだ眠っている者もいるしね。あんまり騒いで、起こしてしまったら可哀想だろう？まだ、こんなに傷だらけなんだから……少しでも休ませないと」

　ふ、と一瞬、いち兄の表情が暗くなる。陽光の色をした瞳が、まるで鋼をまとったように鋭くなり、恨みがましく宙を睨んだ。いち兄にじゃれついていた兄弟たちも、みな一様に動きを止めて顔を伏せ、ある者は憂えげに、ある者は悔しげに、各々ひとみの色を濃くしてみせる。

　部屋全体が張り詰めた空気になり、息をするのも苦しくなるほど、殺気が辺りに染み渡ったとき。その全てを物色するほど明るい気が、部屋の空気を一掃した。

「あーっ！もう、いち兄ったら！そんな顔しちゃダメダメ、ダーメ。鯰尾兄たちがビックリしちゃうよ？」

　きらきらとした青い瞳が、傾げた首に合わせてニッコリ細まる。ぽってりとした桜色のくちびるが、ゆるりと三日月形に弧を描いた。

「それより、お話ってなあに？ボクにも聞かせて欲しいなぁ」

「ダメ？」そういって、乱はそっと眉を下げた。長い亜麻色の髪が、およそ場違いなほどに美しく、ぱらぱらと揺れていた。

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