検索窓
今日:2 hit、昨日:10 hit、合計:280,594 hit

(48) ページ48

.


 ぼんやりと物思いにふけっていると、ふと、足元に一枚の写真が落ちているのを見つけた。

 一体どうしてこんなところに……昨日、私がこの部屋に来たときにはなかったはずだが。

 そう首をひねった瞬間、先程、折れたモップを変えるために、あちこちの棚をひっくり返してしまったと、長谷部様が仰っていたのを思い出した。成程。そのときに出てきたというわけか。



 恐らく前任者のものか、あるいは彼が本丸で撮ったものだろう、と仮定して拾い上げる。それにしても、23世紀にまでなって写真を物体として保管するとは、また古めかしい。

 神様とはいえ人の形をしたものを何十日も風呂に入れないような人だから、きっと変わり者だったのだろう。たぶん。





 写真には、なんの変哲もないありふれた風景が写っていた。

 唯一おかしな点があるとすれば、その写真が、なぜか盛大にピンぼけしていることだ。被写体もいないのに、まるで風景を写すことは不要とばかりに、全体がぼやけている。

 そのせいで、この写真が本丸で撮られたものなのか、それとも別のどこかで撮られたものかさえ判然としない。


 一体どうして、こんなどこから見ても失敗作としか思えない写真を、わざわざ日付まで書いて大事にラミネートしているのだろうか。

 変人の所業といってしまえばそれまでだが、どうにも気にかかる。

 ……。




 しばしの思案のあと、私はちらりと腕時計を見やり、部屋中の棚という棚を開け放った。

 まだ時間には余裕がある。次にやるのは厨房の確保だが、その前に、この写真の出処を突き止めよう。もしかしたら、他にも同じような写真があるかもしれない。

 無駄骨かもしれないが、試す価値はある。この写真がどうしてこんなにピンぼけしているのか、どうしてこんなところ(離れなんか)にあるのか。そこに、今までの違和感の正体がある気がした。



 ……まあ、ここに来てから私は少々おかしいので、この予感も気のせいである可能性が高いのだが……。薬研様からのアクションがない以上、こうして暇を潰すのも──決して効率的とはいえないが──悪くはない、と思う。


.

[49]→←(47)



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (203 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
514人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

フキ(プロフ) - 好きです!続きがとっても気になります!! (2022年6月15日 23時) (レス) id: 171aa22f7a (このIDを非表示/違反報告)
高橋かかし(プロフ) - あんこもちさん» アーーッそうでした!万死……、 すぐに修正します!ありがとうございました! (2019年12月7日 12時) (レス) id: ad9f3afa3e (このIDを非表示/違反報告)
あんこもち(プロフ) - 鯰尾と骨喰は元大太刀ではなく薙刀では? (2019年12月7日 11時) (レス) id: 1c5e807086 (このIDを非表示/違反報告)
高橋かかし(プロフ) - ありがとうございます!頑張ります´ω`* (2019年8月2日 13時) (レス) id: ad9f3afa3e (このIDを非表示/違反報告)
0dh38w152yz4d3p(プロフ) - とっても面白いです!更新楽しみにしてます(*^^*) (2019年7月31日 16時) (レス) id: b48a4a1bf4 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:高橋かかし x他1人 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年11月18日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。