無感情ブラック【刀剣乱舞】 (ページ4)

今日:3 hit、昨日:9 hit、合計:280,558 hit

(04) ページ4

.

　神様はホケホケと笑うと、三日月の浮かぶ瞳に冷たい色をにじませてこちらを見た。

「して、A。ひとつ頼みがあるのだが、よいか」

「なんでしょうか」

「帰ってくれ」

　間髪入れず、ピシャリとした返答だった。

　こんのすけが、酷く狼狽えたように声を上げる。

「三日月様！」

「こんのすけよ、俺たちは疲れたのだ。人に使われ、裏切られ、酷い扱いを受けて……もう散々だ。だというのに、お前はもう一度俺たちに人に使われろというのか。あのようなむごい扱いを受けておいて、俺たちが快く頷けると思うのか」

「そんな！そのようなことは決して！」

　こんのすけはうろうろと視線を彷徨わせたあと、がっくりと肩を落とした。

　まるで人間のような動作に、私はぱちぱちと目を瞬かせる。驚いた。この狐は、こんな表情もできるのか。

「無理なお願いだということは百も承知です。ですが、どうか！どうか今一度、我らにお力をお貸しいただけませんか!?」

「断る」

　冷たい目だった。きらきらと揺らめく藍色の瞳の奥には、確固たる意志が感じられた。

　こんのすけもそれを感じたのか、ぐっと黙り込んで項垂れる。ぺたりと垂れた耳が痛々しい。

「……では、どうか。私がここにいることだけでも、許してはいただけませんか」

「……ほう？」

「私は罪を犯しました。その罪によって、私はここに送られることになりました。ここで暮らしていくことが私への罰だと、そう私の主にいわれたからです。ですが、私がここを追い出されてしまっては、その罰を達成することができない。私には帰る場所がないのです。ここを追い出されてしまっては、困るのです」

　膝をついて、頭を下げた。

　そうだ。困る。また義務が達成できなかったのかと、また迷惑をかけるのかと、マスターに怒られてしまう。それだけは嫌だった。

「……それに、あなた方とて困るでしょう。この本丸は、審神者がいるから機能している。審神者がいなくなれば、ここは崩壊してしまう。そう伺いました」

「生意気な。我らを脅すと申すか」

「滅相もございません。お互いの利点を差し出したまで」

　──決めるのはあなたたちだ。

　じっとりと汗ばむ手を握り込み、私は真っ直ぐ三日月と呼ばれた神様を見つめた。

　辺りから殺気が膨れ上がり、息もできないほどになっていく。苦しい。でも、引けない。

「……よかろう」

「三日月!?」

.