無感情ブラック【刀剣乱舞】 (ページ20)

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「審神者様！」

　本丸に足を踏み入れた瞬間、こんのすけがわっと泣きそうな声を上げて駆け寄ってきた。

「なぜ声をかけてくださらなかったのですか！ほんの一言申してくだされば、このこんのすけ、どこまでもご一緒したといいまするに！」

　キャンキャンと不満を吠えたてる管狐を一瞥し、私は母屋の奥から駆けてくる神様に目を向けた。

　青空と見紛うほど鮮やかな、スカイブルーの髪を持つ神様。彼は私の隣にいた薬研様を目に入れると、途端に安堵の表情を浮かべた。

　ふわりと柔らかに緩んだ顔を見て、私は、神様はこんな表情もできるのか、と。まるで人間のようではないか、と、感情が薄いながらに感心した。

　後から聞いたのだが、彼の方は薬研様の兄君で、一期一振様というのだそう。彼は薬研様以外にもたくさんの弟を抱えており、総称して粟田口派、又は藤四郎兄弟というらしい。

　脇差二人を除いて後は全員短刀な一期様の弟たちは、前任時代、主に戦場で多く散っていったのだとこんのすけはいった。ちなみに、“主に”というのは、ごく稀に前任者本人の手によって折られた者もいたためだ。

　それ故に一期様は、弟たちが戦場に出ることに強く不安を抱いている。否、もはや拒否感ともいってもいい。

　まあ、それはそうだろう。肉親──刀剣である彼らに血の繋がりはないが──が何度も死ぬ(折れる)様子など、普通は見たくない。例え刀剣男士であってもだ。

　一期様は薬研様にしきりに母屋に来るようにいっていたが、それには薬研様自身が拒否を示した。

「俺っちは大将と一緒にいるぜ」……だそうだ。全く、男前な限りである。

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