12話 ページ10
「愛称…。いいえ、通り名…だと思います。彼女はある組織に属していて他にクロック、イリュージョンという人物がいます。」
レディ…女性
クロック…時計
イリュージョン…幻想
統一性のない通り名だと今更ながら思う。
「つまりモリアーティ伯爵の誘拐事件は彼らによるものであり、再び接触しようとしているので、目的を探ってほしいと言うことですか」
「その通りです」
Aはバッグから、先日突き返された金貨を差し出す。
「約束の前金です」
「へーへー」
金に手を伸ばしたシャーロックの手をAは押さえた。
「ただし……、条件があるの」
条件？と、シャーロックが眉を寄せる。
「もし、危険だと思ったら
少し驚いたような表情を見せたものの、シャーロックは、にやりと口の端をつり上げた。
「それはそれは」
「茶化さないで。ちゃんと聞いて。彼女がどうして今、接触してきたのか正直わからないの。だからそれを探ってほしいわけだけど、命を懸けろ何て言わないわ。危険を感じたらすぐに逃げて」
「あの、それほど危険な仕事なんですか」
「おそらく」
ひょいと金貨の入った小袋を手にしたシャーロックは、そのまま後ろに放り投げた。
見事にそれは後ろにあった机の上に着地したが、中身は金貨だ。
それ１枚を巡って殺人さえ起こる昨今、その扱いの雑さに嫌悪感を覚えた。
「ところでアンタ、連続殺人事件を知ってるか？」
突然の話題にAは心の底から首をかしげた。
「新聞に書いてある程度のことなら。」
「どう思った」
「どう？」
「ああ、なんでもいい。素直にどう思った？」
どう。
と、言われても。実を言うとさほど興味があったわけではない。
せいぜい夜道はなるべく人通りがある道を選ばなくちゃ。と、思った程度だ。
「あ！場所も方法もてんで別だったのに、どうして同一犯なのかしら？かな。それがどうかした？」
「いや。同意見だ」
まるで『合格』と言われたようでますます意味がわからない。
「……貴方ってよくわからない」
12日正午。
レディがしてきたグリーンガーデンはその名の通り、庭園を楽しめる場所になる。
薔薇の季節が終わり、新緑が客たちの目を楽しませていた。
日傘を差したレディが現れたのは、時間より少し遅れてだった。
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ゆりあ(プロフ) - 一気読みしてしまう程素敵なお話、ありがとうございます！各キャラが光り、ロマンスと悲劇、そしてシャーロック・ホームズのシリーズ独特の空気感が本当にバランスがよく混ざっていて、1回だけの評価じゃ物足りないです。これからも楽しみにしています！ (2020年11月3日 9時) (
レス) id: 45a22d77c5 (このIDを非表示/違反報告)
may - 面白いです！ (2020年6月23日 12時) (レス) id: f06d3bd476 (このIDを非表示/違反報告)
瑠奈(プロフ) - 面白くて最初から一気読みしました！オリジナルの要素が面白く、かつ世界観やキャラの雰囲気はそのままで、これから先もとっても楽しみです。星10を1回しか付けられないのが残念です。応援してます！ (2020年6月17日 21時) (レス) id: a9fe05af76 (このIDを非表示/違反報告)
るい(プロフ) - とても素敵なお話に一気に読んでしまいました。とても2人の行く末がきになります！お身体に十分気をつけて、頑張ってください。 (2020年4月4日 19時) (レス) id: e522c50a47 (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - ななしさん» ななし様へ ご指摘ありがとうございました。訂正しました。 (2020年3月31日 17時) (レス) id: 0f92dbd5b0 (このIDを非表示/違反報告)
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