43話 ページ41
一体どれくらい眠っていたんだろう。
ゴーンゴーン……
ビック・ベンの鐘の音を聞きながら、ぼんやり鐘の数を数えた。
8…9…10。
10時。
あれ…？
今日って何曜日だったっけ。
日曜ならミサに………
何かを思い出しかけたとき、ドアが開いた。
ウィリアムだ
「起きていたんだね」
いつもと変わらない、微笑。
いつもなら逃げたくなるほど心が震えるのに、今は何かが壊れてしまったように
「来ないで」
「どうしたの？気分が悪い？」
涼しい風が頭を目覚めさせていく。
「ようやくわかった。ロバートさんは『合格』だったのね」
屋敷を追われたのは、単純に身分の差だと思った。
気まぐれで側におき、飽きたら捨てる。
貴族からすれば労働者など替えのきく部品と同じ。
けれど、根本的にそれは誤りだった。
「そう、年齢、品性、経済力。あらゆる条件をクリアした彼が君の夫に相応しいと思った。」
「私の気持ちを知っていたくせに」
「一時の情愛なんてどうでもいい。」
白い手がAの頬を撫でた。
「必要なのは生涯君を裏切らず、守り、慈しむパートナーだ」
「残酷ね」
叱られた子供のように揺れる緋色の瞳。
「でも」
「やっと手にいれた」
＊
テームズ川側に沿い、小さな教会があった。
古いと言うより、歴史があると評価される外装。
期待に裏切られることなく、扉の中はステンドグラスを通し、教会の中に美しく月明かりが灯る。
マリア像を見上げた女は修道服を着てはいるものの、
白銀に近い金髪は緩やかなウエーブを描いていた。
「シスター・シシューいかがなされました」
タイをしっかり締めた老人だ。
背筋を伸ばし、しっかりした足取りで、シスターの隣に立った。
「見て。聖母マリアは月明かりを浴びて美しく輝いていらっしゃるわ」
「ええ、本当に」
目を細目ながら、老人は胸元で十字を切った。
「それなのに、この国には闇に紛れて、牙を向く機会を今か今かと待つ獣が
「はて…？犯罪卿の事ですか？」
シスターは眉間にシワを寄せ、この世を憂いた。
「いかなる理由があろうと、人を殺める行為は主のお志に背く行いだわ」
「左様でございますな」
うんうん、頷いた老人の姿に頬を緩ませた。
「シスター、奥様がお戻りです」
＊
見つけたけど、無理〜！！とランドがあっさり逃げ帰って来たのは、2日後の事。
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ゆりあ(プロフ) - 一気読みしてしまう程素敵なお話、ありがとうございます！各キャラが光り、ロマンスと悲劇、そしてシャーロック・ホームズのシリーズ独特の空気感が本当にバランスがよく混ざっていて、1回だけの評価じゃ物足りないです。これからも楽しみにしています！ (2020年11月3日 9時) (
レス) id: 45a22d77c5 (このIDを非表示/違反報告)
may - 面白いです！ (2020年6月23日 12時) (レス) id: f06d3bd476 (このIDを非表示/違反報告)
瑠奈(プロフ) - 面白くて最初から一気読みしました！オリジナルの要素が面白く、かつ世界観やキャラの雰囲気はそのままで、これから先もとっても楽しみです。星10を1回しか付けられないのが残念です。応援してます！ (2020年6月17日 21時) (レス) id: a9fe05af76 (このIDを非表示/違反報告)
るい(プロフ) - とても素敵なお話に一気に読んでしまいました。とても2人の行く末がきになります！お身体に十分気をつけて、頑張ってください。 (2020年4月4日 19時) (レス) id: e522c50a47 (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - ななしさん» ななし様へ ご指摘ありがとうございました。訂正しました。 (2020年3月31日 17時) (レス) id: 0f92dbd5b0 (このIDを非表示/違反報告)
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