22話 ページ20
その緋色の目には、きっとなにも写っていないのだろうとルイスは思った。
「何を考えているんですか？兄さん」
「うん？」
「珍しくぼんやりしているように見えたので」
「…そうかな」
「後悔していますか？Aを母親の元に返した事を」
「いや。」
「そうですか」
強がっている様子は全くない。
ただ、口元に浮かんでいる微笑が切なげで何を言ったらいいのかわからない。
「再度調べましたが、ロバート医師は品行方正。賭け事をすることもなく、穏やかで人当たりも良い。医者を目指してからは勉強漬けの毎日で目立った女の影もありませんでした。Aの相手に申し分はありません」
「そう、良かった」
力なく微笑む姿にルイスは思わず「兄さん」と声をかけてしまう。
「これがベストだ」
何故、ウィリアムがAを手放すのかルイスには痛いほどよくわかっていた。
モリアーティ家は王家に忠実な伯爵家の裏で、『犯罪卿』としてロンドンに
ロンドン中の犯罪を把握し、目的のためならば
彼女を巻き込む事は出来ない。
どれ程泣かれようと憎まれようと、それだけは出来ない。
彼女は。
彼女だけは。
「彼女には幸せになってほしい。どうか、幸せに……」
愛しているから。
コンコンと軽いノック音の後、ボンドが顔を出した。
「アルバート様が帰ってきたよ。会議室に集まってもらってもいいかな？」
既に会議室に集まっていたのはアルバート、モラン、レンフォード。そして、フレッドだ。
決して広くはない部屋の男ばかり揃うと、むさ苦しくなりそうだが、
「今回の議題は２つです」
眼鏡に手を当て、ルイスが会議を進行していく。
「まずは、フレッドが襲われた件についてです」
以前と同じとはいかないが、意識を取り戻したフレッドは順調に回復していた。
「フレッドが調べていた一件は先々月に起こりました。舞台はレイン男爵家。男爵は表立っては慈善事業にも精力的な貴族として知られていましたが、そのうらで
胸くそ悪ぃ。と、モランが眉間にシワを寄せる。
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ゆりあ(プロフ) - 一気読みしてしまう程素敵なお話、ありがとうございます！各キャラが光り、ロマンスと悲劇、そしてシャーロック・ホームズのシリーズ独特の空気感が本当にバランスがよく混ざっていて、1回だけの評価じゃ物足りないです。これからも楽しみにしています！ (2020年11月3日 9時) (
レス) id: 45a22d77c5 (このIDを非表示/違反報告)
may - 面白いです！ (2020年6月23日 12時) (レス) id: f06d3bd476 (このIDを非表示/違反報告)
瑠奈(プロフ) - 面白くて最初から一気読みしました！オリジナルの要素が面白く、かつ世界観やキャラの雰囲気はそのままで、これから先もとっても楽しみです。星10を1回しか付けられないのが残念です。応援してます！ (2020年6月17日 21時) (レス) id: a9fe05af76 (このIDを非表示/違反報告)
るい(プロフ) - とても素敵なお話に一気に読んでしまいました。とても2人の行く末がきになります！お身体に十分気をつけて、頑張ってください。 (2020年4月4日 19時) (レス) id: e522c50a47 (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - ななしさん» ななし様へ ご指摘ありがとうございました。訂正しました。 (2020年3月31日 17時) (レス) id: 0f92dbd5b0 (このIDを非表示/違反報告)
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