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「あーー!何してんだよ!危ねぇな!」
蛇行した車の中、剛ちゃんは前のめりになって絶叫、そして怒号を響かせた。
「怖っ!怖っ!てか、剛ちゃんが悪いんだからね?」
ハンドルを強く握りアクセルを緩めて軌道修正させた車をまた真っ直ぐ走らせる
「ったく、臣さんって聞いただけでどんだけ動揺してんの?」
「…………別に動揺したわけじゃ」
「じゃあもっと臣さんの話してあげようか?」
「剛ちゃん!ちゃんと実家に辿り着きたかったらもう臣くんの話しないで!」
私がそう強く言えば「わかりましたー」と不満そうな顔で外に目を向けた
少しして、剛ちゃんは臣くんの話をしなくなった代わりに、小さな寝息を立て始める
俺がついてるとか言いながら、寝るかね?
不安そうに乗ってたのに、寝ますかね?
まぁいっか。
気持ち良さそうに眠る剛ちゃんを見て、幼い頃を思い出す
「Aちゃーん、遊ぼー!」と無邪気な笑顔で駆け寄る小学生の剛ちゃん
「剛ちゃんとかでけぇ声で呼ぶなよ!恥ずかしい」と反抗期に入って悪態をつき出した中学生の剛ちゃん
「A、パンツ見えそう!」と私の呼び方が変わって、モテだしチャラつき始めた高校生の剛ちゃん
今じゃすっかり色気を増したドSな男。
でも、誰に対しても優しいところは変わらない。
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2時間ほど走り、やっと着いた私たちの故郷
隣の家同士の私たちは車を降りてそれぞれの実家へ帰る
「Aー!おかえりー!あら?剛ちゃんは?」
一目散に玄関へ駆けてきたお母さん
私に会った喜びも束の間、剛ちゃんが居ないことにガッカリしてる
「剛ちゃんなら実家に帰ったよ!」
「えー!早く会いたかったのにー!」ぶつぶつ言ってるお母さんを置いてリビングに入れば、ソファーに横になるお父さんが起き上がった
「おー!キャバ嬢のお帰りか!」
おい父よ、私の顔を見るなりそれか。
「もうキャバ嬢じゃないからね?」
世の中には、"人様の目が" なんて夜の仕事を許してくれない親もいるみたいだけど
うちの両親は"No1なんてやるじゃなーい" と自分の事のように喜んでくれてた。
私の大好きな家族。
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作者名:taka | 作成日時:2016年4月19日 23時