私はラメントーソ (ページ8)

今日:5 hit、昨日:24 hit、合計:24,402 hit

あの時、あの感情ページ8

『あっ、克樹？』

矢花と私がよく行った店なんて、大抵大学の近くのサラリーマンがたくさん来るような飲み屋か、ゴリゴリの男の人がたくさんくるラーメン屋くらいしか無いわけで克樹のあの雰囲気に見合う店はなかなかないと思っていた

けれども、彼は案外私が出したいくつかの候補のうちからわざわざ行きたい店を選んでくれて、しかも文面からはなんだかウキウキとした気持ちが伝わってきた

…あれ、、おかしいぞ、、

私の知ってる克樹はこんな飲み屋に来るような人ではなかった
まあもっとも、私の知っている克樹はあの時の…18歳の克樹で止まっているのだけれど、、

『ごめんごめん、仕事終わりに』

『ううん。こっちこそ…ていうか、克樹本当にこの店でいいの？』

日本のトップ私立大学を卒業した彼は大手に入社して、今だってほら…明らかに私とは桁の違うスーツを身に纏って涼しい顔をしている

…でもそれが私の知ってる克樹だ

『なんで？俺もよくこういう店来るし、、』

『本当に？だってほら、麻布とか…青山とか…銀座とか…』

オシャレ街を必死に並べる私を見て、彼はなんだか余裕そうに笑った
…腹が立つけどかっこいい

『Aさ、俺にどんなイメージ持ってるわけ？』

『どんなイメージって言われても…貴族？…高貴、、みたいな？』

『全然違うって、、俺だって毎日満員電車に揺られてるし、酔っ払って駅で…これ以上は言わないけど、、』

克樹にそんな庶民的な一面があるなんて驚きだ
でも確かに、毎日MAZDAのCX-8で社長出勤して、夜は港区のタワマンでブランデーを飲むなんて…まあ、あり得ないよね、、

そう思うと克樹も私たちと同じ社会人で、一般人なのだなと思い知らされる

『嶺亜も克樹も立派に社会人やってるんだね〜、なんか信じられない』

『嶺亜…と、特別何かあったわけではなさそうだね、、』

『…克樹はさ、、嶺亜と恋バナとかしないの？』

克樹は目を丸くして表情を固めた後、徐々にその表情を崩して大きな口を開けて笑った

『恋バナってなんだよ！中学生かよ！』

『いいじゃん別に、それしか思いつかなかったんだよ！』

『そうだなぁ、、嶺亜と恋愛の話っていうのはあんまりしないかも。大学生の頃、お互い彼女はいたんだけどね』

『知ってる知ってる！』

『そういえばあの彼女、Aにそっくりだったよなぁ、、』

彼女の顔はよく覚えている
私にそっくりなあの女の人の顔を見て少し期待をしてしまったものだ、、