私はラメントーソ (ページ36)

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そこからどうやって帰ったのかは覚えていない
…お通夜と告別式をやるからとりあえず喪服を取りに戻ったものの私は憔悴し切って動けなくなってしまった

喪主は…このままじゃ慶ってことになる、、けどまだ大学生の彼には荷が重すぎる
そうなれば喪主はこの私だ

携帯には慶、中村さん、お父さん、そして…嶺亜からの着信がある
みんななかなか戻ってこない私を心配しているんだろう

…どうすればいいかわからない
もうどうにもならないのにぐるぐると頭に変な考えがよぎってその場から立ち上がることができなかった

…ふと

家のチャイムが鳴る音が聞こえた
まあ多分、あまりにも戻ってこない私を心配して慶か中村さんかお父さんが迎えにきてくれたんだろうなと思う

私はふらつく足でなんとか玄関のドアを開けた

そこにいたのは慶でもなく、中村さんでもなく、お父さんでもなく、親戚の誰でもなく…

嶺亜だった

なんだかもう我慢できなくて、私は嶺亜の目の前で少し泣いてしまった
彼は私に何をするわけでもなく、だけど優しい顔をして私を見つめていた

『嶺亜…ごめん、、』

『いいよ。親亡くして普通でいられるほうがおかしいし』

『嶺亜は…いいの？お母さんと付き合ってたんじゃないの？』

『まああれは人助けみたいなもんだし』

『介護、、みたいな？』

『そこまでは言ってないよ』

なんとなく嶺亜とお母さんの関係は気持ち悪いと感じてしまうけど、今更部外者の私が何を言ったってしょうがない

『ほら、行こ…ね？』

優しい嶺亜に五年ほど前の気持ちが戻ってくる
こんな時に母親の恋人にときめいてる私も私だけど…

『嶺亜…ありがとう』

『なんでお礼なんか言うんだよ。俺、気持ち悪がられるポジションでしょ？』

『でも…ありがとう』

『なんだよ。気持ち悪いな』

嶺亜はそう言いながら私の手を強く握った

『喪服に着替えてくるからちょっと待ってて』

『うん、待ってるから一緒に行こう』

お母さんと付き合ってたというなんとも君の悪い話を忘れてしまうほど嶺亜は嶺亜だった
変わってるようで変わっていない。いつまでもあの頃の彼がそこにあり続けていることに心底喜びを覚えた

『私、もしかしたら喪主をやらなくちゃいけないかもしれない』

『あ〜』

なんだか嶺亜がモゴモゴとし始めた
…なんだこの歯切れの悪い感じは、、、

『A…ごめん。喪主は、、俺がやるんだ』