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雪解けと暫しの別れ ページ8

『慶君、ホームシックにならない?大丈夫?』

『大丈夫ですよ!矢花君もたまには連絡して下さいね』

『うんうん』


今日の主役である慶君は出逢ったあの頃より男らしく逞しくなっていた

お手伝いとして駆り出された琳寧君は先輩のお母さんに習ってオードブルを盛り付けているし、こんぴーは人目を盗んで一足先にビールを飲んでいた


『じゃあ大体準備できたし始める?』


先輩の言葉を皮切りに形式的にとりあえずクラッカーを鳴らす…あれ、俺のクラッカー鳴らなくない?


…まあそういう事は多いからそこまで気にならないけど、なんというか不幸体質というか、、



『慶!頑張ってね!』

『たまには連絡してね!』

『向こうでも頑張って!』



素直で真っ直ぐな慶君だからもちろんお友達にも人気がある
…彼の横にあるプレゼントの山がその人望を物語っていた


…しっかし、姉弟でどうしてここまで違うかな、、



『慶君、これ俺から。向こうで使ってね』


とりあえず近所で買った少し良い時計を渡す
慶君とお母さんの目の色が変わって必要以上に感謝してもらった
…そんなに気にしなくて良いのに



『慶。これお母さんと私からね』

『…通帳?』

『そう。向こうでお金必要でしょ?本当に少しなんだけど二人で貯めたから』

『そんなの受け取れないよ…』

『あんたこの家で一番ガキのくせに何遠慮してんの?』



慶君が何故か隣に座っていた俺に通帳を見せてくれる


えーっと、一十百千万十万……五十万?


『…こんな大金受け取れない、、』

『いいの。そのために二人で貯めたんだから』

『…それでも…お姉ちゃんだって奨学金あるのに、、』

『留学先で何かあったらどうするの?ホストファミリーの人だって必ず良い人だとは限らないわ』

『だってある程度は持ってるのに…こんな大金』

『あぁ!もう、うるさい!これはあんたのお金だから持っていくも置いていくも自由にすれば良いんじゃない?だけどもし、お金で困った事があったら迷わずにこれを頼って……もう一回言うけど、これは慶のお金だから』


慶君が少しだけ考え込んでお母さんと先輩の方に顔を向ける



『ありがとう、お母さん、お姉ちゃん』

『必死に貯めたんだから現地の女の子とかに貢いじゃダメだよ?』

『も〜、お姉ちゃんじゃないんだからそんな事しないって!』

『お姉ちゃんじゃないんだからってどういう意味よ!』



先輩が慶君の髪を軽く引っ張る
…慶君の顔はどこか嬉しそうだった

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作者名:マリエ | 作者ホームページ:http://commu.nosv.org/p/taka231  
作成日時:2022年4月15日 22時

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