僕はアンプロンプチュ (ページ36)

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よろしくお願いします！
そう先輩が大きく透き通った声を合図に俺のギターが宙に響く

先輩がライブのミュージシャンのように客を煽ってやっと歌い始める

うまい、やっぱりその一言に尽きる
俺もハモリとは言えないほど大きな声でハモってるのに先輩の歌は負けるどころか、俺の声をかき消しにくる勢いだ

最後の繰り返しのサビだけ、俺はハモリから主旋律を歌うことになるのだけど、先輩は俺の声量をある程度考慮してハモリを入れてくれた

…プロみたいだ、、、

多分、いや、絶対
誰にも負けていない自信がある

演奏を終えてからステージ上で先輩と軽くハイタッチをする
ハイタッチをし終えて、観客席を見た先輩の顔がいつかのように固まった

『どうしました？』

そう優しく聞いたけど、先輩は俺の言葉なんて聞かずに舞台裏に戻ってしまう
ほら、司会の人があたふたしてるよ…

俺も追いかけるように小走りで行くけど、観客はこれも一種のパフォーマンスと思っているようでちょうど良かったとしか言えない

先輩を追いかけて急いで舞台袖に戻ったものの、もちろん先輩はいない。…あの人どこ行ったんだ？

ステージを完全に後にした時、遠くで先輩がすごいスピードで走っているのを見た
そして俺も負けじとそれを追いかける

『…先輩！』

急いで追いついて肩を掴んだけれど、先輩は離してと言った様子でブンブンと揺れる

『どうしたんですか！』

『後で説明するから一回離して！』

そんなこと言われてしまっては、離さないわけにはいかないので黙って先輩の肩から手を外す

そのまま先輩の行く先をなんとなく眺めていたら男の人二人と話しているのが見えた

…中村さんと

もう一人の人は確か、ラーメン屋で会った先輩のお父さん？

なんであの二人が？

俺はバレないように先輩に近づく
しかし、先輩がこちらに振り向いた瞬間に俺は隠れそびれて結局見つかってしまった

近くにいた中村さんが途端に矢花君？なんて言うから俺はびっくりして

『中村さん、、どうして』

なんて言ってしまった

『今からお父さんと中村さんに話聞くんだけど、矢花も来る？』

『いやなんでっすか、俺関係ないじゃないですか』

『なんか奢る』

『行きます行かせてください』

中村さん、先輩のお父さん、先輩、そして俺
異様なメンバーで大学を出てゾロゾロと歩いて行く

…なんで俺いるんだ？どうしても場違い感が拭えなかった