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先輩の家からの帰り道。なんとなく気まずい距離感で二人、なんとも言えないペースで歩く
『先輩』
俺の呼びかけは応答されることなく夜空に消えていこうとした
…あれ?無視された?
『先輩!…先輩ってば、無視しないでくださいよ』
『…あぁ、ごめん。…気付かなかった、、』
『はあ、大丈夫ですか?元気ないですね』
『元気もなくなるでしょ…母親は変な男に四回も引っかかって…もう懲り懲りよ…あの人見る目なさすぎるのよね…』
確かに、俺でさえも四回はさすがに男を見る目が無いと思う
だけどどうして先輩も一緒に元気がなくなってるんだ、、?
『でも私も私だよね…中村さんの事見抜かなかった。…やっぱりお母さんの血継いでるんだよなぁ…慶もね、、』
『仕方ないですよ。赤の他人の俺まで騙されてましたから…それにお母さん、あんなに幸せそうだったんだから一緒にさせてあげたいと思わない方がおかしいじゃないですか。先輩は悪くないですよ。自分を責めないで下さい』
『矢花…ありがとう』
きっと、お母さんと一緒にいるとどうして自分が気づけてやらなかったんだって自分の事を責めちゃうからつらくて帰ったんだろうな…
今ばかりは思いっきり先輩の見方をしてあげて、何も悪くないよとただそう言ってあげたい
『お母さんのことばっかりも考えてられないのよ。うち今百万ないの…』
『百万きついっすね…警察に届かないんすか?』
『お母さんに聞いてみるけど…あの人警察嫌いなのよね、、元彼がいるとかなんとか』
『あぁ…』
なんとも先輩お母さんらしい理由だ
『どうするんですか?…先輩のこれからの学費とか、、』
『それは大丈夫…だけど慶に仕送り出来なくなるかも、、』
それは大変だ
なんとか助けてあげたいけど、同じく学生である俺は無力で貧乏だから支援するなんてできない
『そういえば矢花。今年もフェス出るの?』
先輩が話を変えようとしてくれているけど今は正直無理しないでほしいと言う一言に尽きる…
フェス?
フェスの賞金って確か、、!
俺は急いで携帯で調べる。そこには俺らが喉から手が出るほど求めていた百万の文字
『先輩、フェス出ません?』
『え、フェス?私が、、?やだよ』
『賞金百万ですよ』
先輩の宙ぶらりんな手がピタッと止まった
『でも…一人で出るの?』
『俺とですよ』
『え〜、矢花と?』
『いいじゃないですか。二人で夢見ましょうよ』
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作者名:マリエ | 作者ホームページ:http://commu.nosv.org/p/taka231
作成日時:2022年4月15日 22時