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『先輩、そろそろ舞台裏行かないと!』


矢花が急かしてくるけれど、私の涙は止まらない
嶺亜も困った顔をしている、、でも、困るぐらいなら付き合ってと思ってしまう私も相当頭がおかしくなってるに違いない


『…俺のせいだよね』



嶺亜がポツリとつぶやいた言葉が沈黙の中で嫌なくらい響いた
手の甲で涙を拭って前を向くと、そこには悲しそうな表情をした嶺亜の顔があった



『何したら泣き止んでくれるの?』

『何したらって…』

『そんな顔でコンクールなんて出て欲しくないし、、』

『嶺亜のせいだもん』

『ほら、とりあえずこれ』


そう言われて目の前に差し出されたのは濃紺のハンカチ
…渡してくれたのは嬉しいけど私の涙でビチャビチャにするわけにもいかない。洗濯して返すにしても



『これ、矢花のだよ』

『あ、そうなの?』



とりあえず躊躇なく鼻をかんだ
矢花が近くで変顔してるけど、まあいいや。洗濯するし



『先輩、こんなこと言うのもあれですけど全然泣き止んでませんよ』


矢花のハンカチで必死に涙を拭うものの涙腺のゆるみは治らずダラダラと涙が溢れるばかりだった


『ていうか鼻かむならティッシュでやってくださいよ』

『ごめん!洗濯するから許して!ていうか新品買って返す!』

『別にそこまで言ってませんけど』


それでも、こんな茶番できるくらいには元気がある


時計をふと見ると、集合時間まであと七分だった
…非常にまずい、このままじゃ…何もかもおしまいだ


『先輩、頑張って下さいよ。今日、琳寧君も見にきてるんですよ?』

『そうなの?』

『はい。皆、先輩の事応援してます』



嶺亜は真剣に何かを考え込んでいるし、矢花は私の機嫌を取るのに必死。
当の私は相も変わらずびーびーと子供のように泣いている



『…わかった、セクハラとか言わないでね』

『え?なに…』



嶺亜がじわじわと私に近づいてくる、緊張して顔をプイッと横に向けると彼がすかさず私の唇の端に




自分の唇をくっつけた




『へ?』

『…頑張ってね』

『…嶺亜?』



…これって巷で言うキスってやつ?



『ねえ、なんで…』

『A。よく聞け』

『えっ、え?…うん』

『お前には俺よりももっと相応しい相手がいるんだよ。Aの事を想ってる相手がいる。だから俺なんかに自分の事安売りしちゃダメ。わかった?』

『想ってる人って…』

『それはそのうちわかるよ。じゃあ頑張って』



嶺亜がこっちを振り返ることはなかった

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マリエ(プロフ) - ハルカさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!これからもよろしくお願い致します! (2022年4月9日 16時) (レス) id: c6cf29b1a9 (このIDを非表示/違反報告)
ハルカ(プロフ) - 良すぎて一気読みしてしまいました……お忙しいかとは思いますが続き楽しみにしております! (2022年4月9日 2時) (レス) id: 17cc79c11f (このIDを非表示/違反報告)
マリエ(プロフ) - 松さん» そのように言ってくださって本当に嬉しいです!完結まで是非宜しくお願い致します。 (2022年3月29日 19時) (レス) @page35 id: c6cf29b1a9 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - はじめまして!めちゃくちゃ面白くて更新楽しみにしてます!頑張ってください! (2022年3月28日 23時) (レス) @page35 id: 309f0f86b1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:マリエ | 作者ホームページ:http://commu.nosv.org/p/taka231  
作成日時:2022年2月23日 16時

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