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『…なにこれ重っ』
『絶対先輩の体操着ですって』
『行きは軽かったのに…』
『水含んだら重くなるのは当たり前じゃないですか』
流石に、水に濡れたタオルやら体操服やらを籠で運びながら先輩を後ろに乗せることなんて不可能だ
だから『先輩は歩きでお願いします』なんて言ったら乗せてくれるのが当たり前でしょ?みたいな顔でドスンと乗ってきた
女の人にこんなことを言うのはどうかと思うけど…重い
降りてほしい…
『ちょっと俺の腕が限界なので降りてくださいよ!』
『無理!ラーメン奢ったんだからいいじゃん!』
『じゃあバス調べてあげますからそれで帰ってくださいってば』
『やだ!ほんっとに矢花って…なんつーかレディーファーストが出来ないよね!』
普段は女の人には優しいですよ…基本的にはね
先輩は図々しいんですよって言葉をグッと抑えて自転車をひき続ける
『…重い』
『トレーニング、トレーニング!』
『ラーメンあんなに食うんじゃなかった』
『矢花って本当に遠慮がないよね。替え玉してたでしょ?』
『交換条件じゃないですか!』
最初こそ俺達は文句を垂れながら帰っていたんだけど、いつの間にか、あいつがかっこいいだの、あいつがムカつくだの、いつもの他愛のない世間話になっていた
辺りはもう真っ暗で小さな星と微妙な形の月が水面を照らしていた
だけど、俺たちだけは全く風情がなく下世話な話をしたりくだらない話をしていた
…正直認めたくはないけど先輩とは趣味が合う、気も合う、そして価値観も合う
俺がこの映画が好きだって言えば先輩は見て感想を言ってくれるあそこがいいんですよって言えばあそこのここがいいよねって俺のドンピシャを指摘してくれる
『…認めてあげた方がいいのかな…お母さんの事…』
先輩がポツリと呟いた言葉は静かな夜の中に響いた
俺はなんて言えばいいかわからなくてしばらくフリーズしたけど少しでも先輩に元気になってほしいと思って言葉を選んで伝える事にした
『…無理に認めることはないと思いますよ。…唯一同性なのは先輩だけなんですから、…先輩の直感で決めたことは…きっと間違ってないですよ』
あんまり思い詰めないでくださいねって付け加えながら労う意味を込めて肩を叩いた
先輩の大きな目がこっちを見てる
…カラコン変えたかな…ちょっと変わった
『…ありがとう』
なんだか素直にお礼を言われてむず痒くなった
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マリエ(プロフ) - 海宙さん» 身に余るお言葉を頂きありがとうございます!これからもよろしくお願い致します! (2022年2月24日 18時) (レス) id: c6cf29b1a9 (このIDを非表示/違反報告)
海宙(プロフ) - とても綺麗な作品で毎回読むのが楽しみです。これからも無理の無いペースでの更新を頑張ってください。 (2022年2月23日 0時) (レス) @page50 id: c037788408 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:マリエ | 作者ホームページ:http://commu.nosv.org/p/taka231
作成日時:2022年1月26日 9時