キミと月のブランコ。４ (ページ38)

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「帰ってって言ってるじゃん。私、仕事あるの。」

「わかってる、わかってるけど……」

「………なら、早く。」

「うん。」

「手、離して。」

少し後ろで掴まれた腕に視線を向けた。

隆二の大きな手がしっかり手首を握ってて、きゅっと指に力が入るのが見えた。

それはきっと、隆二のちっちゃな抵抗。

顔を見れば今にも泣きそうな表情で、隆二の考えてることがわからない。

「隆二、お願い。もう離して。」

体を向けて鋭い視線を送っても、

「やだ…………離さない。」

同じ視線を返されるだけ。

「彼女出来たくせに。」

期待させるようなことばっかりしないでよ。

「なんでそんな勘違いしてんの？岩ちゃんから聞いて、はぁ？って思った。」

「勘違いじゃないよ、見たもん私。女の子とお花見行ったでしょ。」

「なんだ、あの日……居たんだ、Aも。」

「…………うん。行ったよ………臣くんと。」

「臣と？」

「２人じゃないけど、臣くんと。」

「付き合ってんの？臣と。」

「まだ………だよ。」

「好きなの？」

「……………わからない。」

隆二に会ったら、気持ちは簡単に揺れた。

「俺、彼女なんかいないよ。あの日は地元の友達と集まって、Aが見た子はただの友達だから。ていうか、あれ、友達の嫁だし。」

「友達の、嫁。」

「うん。たぶん買い出しの時でしょ見たの。俺らジャンケンで負けて２人で行ったから。」

「じゃあ彼女じゃないの？」

「違うよ。」

なんだ、なんだよ。

あの後ろ姿を見て私は臣くんに飛び込んだのに。

もう諦めようって、決心したのに。

「A、あの、あのさ………」

「ん？」

「もう…………もう、俺のこと……Aの中には残ってないの？」

「…………どうしてそんな事聞くの？」

ふったのは、隆二なのに。

先に消そうとしたのはそっちでしょ。