キミと月のブランコ。４ (ページ21)

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21～side 広臣～ページ21

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＂行っていいよ。あのアパート。＂

って言われても、＂はい、じゃあ行っきまーす。＂なんてノコノコ行けるわけねぇじゃん。

毎日でっかい溜息ついてる隆二を見たらさ、このチャンスを逃したほうがいいかなって思っちゃうわ。

罪悪感くらい感じますよ、俺だって。

あっ、あいつわざとだったりして。

俺が行けないように。

でもなぁ、会いに行く理由も見つかんねぇしなぁ。

やっぱりDVDは持って帰るべきでした。

２人が別れたって知ってから、あれこれ考えてたらもう１週間も経ってた。

日に日に彼女のことは考えなくなってて。

会いたいって思うのは、Aちゃんだけになってた。

ケリつけないと、彼女とはちゃんと。

「もしもしー、臣？今日は来てくれるんでしょー？」

「あー、うん。行こっかな。」

暇だし、やりたいし。

最低な理由だな、これ。

「もー、ずーっと来てくれないから超寂しかったしー。」

「ごめん、ごめん。」

ほんとかよって疑う俺って、本当に最低な彼氏だと思う。

マンションに向かおうと駅のタクシー乗り場まで歩いてある間も、電話の向こうで彼女は久々の再会に胸踊らせる。

「どれくらいで着くー？」

浮かれる彼女に対して、＂たまにはお前が来いよ。＂って黒い感情すら湧いた。

もうダメじゃん、好きじゃない。

タクシーに乗るのを一瞬躊躇った。

「臣くーん！」

そんな俺に声が向けられた。

電話先からじゃなくて、後ろから。

「……………Aちゃん。」

手を振りながら小走りで俺のとこに。

初めてAちゃんから来てくれた。

たったそれだけで泣きたくなるくらい嬉しいって思ったのも初めてだった。

「ごめん、やっぱり…………行けない。」

勘違いしちゃうような笑顔で走ってくるAちゃんのせいだよ。

彼女より、キミがいい。