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もう帰ろうかなって思ったら、元気よく玄関のドアを開けて帰ってきた岩ちゃん。
「ただいまー！ねぇ、Aちゃん来てるの？」
「よく分かったね、Aって。」
「だって千夏の友達ってAちゃんくらいでしょ？」
「はぁ！？どういう意味それ！友達居ないみたいな言い方しないでよ！」
「あー、そうじゃなくて！うちに来るのはAちゃんだけってこと！俺らのこと知ってるの他に居ないでしょ？」
「ほんとムカつく、剛典も隆二くんも。」
「えー、隆二さんはいいけどさぁ………って、なんで隆二さん？」
「あー、もう今その名前出さないで！」
「先に出したの千夏じゃん！」
玄関から聞こえてくる２人の痴話喧嘩。
それさえも羨ましく思う。
私には喧嘩する相手すらもう居ないんだから。
「Aちゃん、いらっしゃい。」
笑顔でリビングに入って来た岩ちゃん。
「おかえり、岩ちゃん。」
その笑顔を見たとたん、浮かんだ隆二の笑顔。
「今日は隆二さんも休みだったのに一緒じゃなかったんだ。」
岩ちゃんはまだ何も知らない。
だからボンちゃんが名前出さないでって言った意味も、
「えっ、ちょっとAちゃん！？どうしたの！？」
私が今、顔を歪めて涙を流してる理由も知らないんだよね。
「ねぇ剛典、ほんとやめて。大丈夫？A。」
慌てて駆け寄ってくれたボンちゃんは肩を優しく撫でてなだめてくれる。
「…………ごめんね………泣いちゃって。」
「いいんだよ、泣いて。いっぱい泣きな。」
ボンちゃんに抱きしめられる私の背中を岩ちゃんはそっと撫でて��何があったの？��って、声のトーンを下げて聞いた。
「……………別れたの、隆二と。」
口にすればするほど悲しくなって、岩ちゃんの顔を見たらもっと泣けてきた。
「俺の顔見て泣かないでよ。俺まで泣いちゃうじゃん。」
「だって………思い出しちゃうんだもん、岩ちゃん見ると。」
泣いても隆二と戻れるわけじゃないのに、涙が止まらない。
この苦しみは、いつまで続きますか。
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作者名：taka
| 作成日時：2017年4月10日 22時
