キミと月のブランコ。４ (ページ12)

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黙り込んだ隆二はずっと私の手の甲を親指で撫でていた。

「これが今の私の実力だから。」

責めたりしないでね、自分のことを。

「変なこと言っちゃってごめんね。」

大会の結果は隆二のせいなんかじゃないからね。

「Aは、頑張ってた。」

消えそうな声で呟いた隆二になにを言ったらいいのか分からなくなって。

ふたりして黙りこくったタクシーの中。

繋いだ手だけはそのままで、視線だけが絡まなかった。

呼吸音にときどき混じる鼻をすする音。

私からだけじゃなくて、それは隆二からも同じように聞こえてた。

ごめんね、私がこんな結果を残したせいで。

隆二のことを、泣かせちゃって。

本当にごめんね。

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「Aさん、クリームがもう在庫ないんですけど………発注って、出来てますか？」

「えっ、ちょっと待ってね…………………あっ、ごめん。出来てなかったから、他の店舗にあるか聞いてみる。」

社内大会から数日、私は集中力に欠けてばかりでミスを頻繁にするようになっていた。

「Aさん、予約のお客様いらしてるんですけど……どうします？」

「…………今行きます。」

予約が被ってお客様にまで迷惑をかける始末。

「どうしたんですか？最近のAさん、Aさんらしくないって言うか……何が原因でそんなにミスばっかりなんですか？」

失敗続きの私に痺れを切らせたのか、そう聞いてきたのは奈央ちゃん。

「ごめんね、店長なのに私。」

「この前の大会が原因なんですか？Aさんのミスも…………隆二の声が出なくなったのも。」

「えっ…………な、に？」

「付き合ってるんですよね、隆二と。」

「……………うん。でも、なんで。」

「仲良さそうだからもしかしてって思ってたんですけどね、見ちゃったんです私………大会の日、隆二がAさんのこと抱きしめてるとこ。」

＂仕事に私情を持ち込むのはどうかと思います。２人とも。＂

そう言い残して奈央ちゃんは個室へ入っていった。

彼女への配慮が疎かになってたことに気付かず、隆二の声が出なくなったことも知らなかった。

私は本当に自分のことしか考えてないんだと痛いほど思い知らされた。