キミと月のブランコ。４ (ページ1)

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1～side 広臣～ページ1

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「あの、すいません！引き返せますか？」

Aちゃんがタクシーを降りて少し走ったあとに気付いた紙袋。

せっかくあげたのに……忘れてるし。

タクシーの運転手は＂いやぁ、この道狭いからねぇ。＂なんて渋った顔をした。

いっか、また今度で。

そう思ったのに……。

俺は今、紙袋片手に夜道を駆け抜けてる。

髪が乱れるのは何よりも嫌だっていうのに、すげぇ乱してる。

なにしてんだろ、俺。

隆二の彼女のために、なに走ってんだろ。

＂俺もハマったかも、ゴッドハンドに。＂

さっきの言葉を思い出す。

いや、なに言っちゃってんだよ……マジで。

たぶんあの子のことだから、本当の意味なんて理解してないんだろうけど。

それもまたそれで、虚しい気もする。

あー、もう………自分がわかんねぇ。

なにかと理由を探してはあの子に近づいて。

そのたびに隆二への気持ちを聞いてへこんで。

でも、また会いたい。

今だってこれを届ければもう少し一緒に居られるって思ってる。

隆二にさえバレなければいいやって……。

あの子だって隆二には知られたくないっぽいし。

それを俺は上手く利用してる。

俺の腹って真っ黒じゃん。

って………本気でハマってんじゃん、あの子に。

目前に見えたアパート。

俺、部屋の番号知らねぇし。

電話すればいっかと足を止めた外階段の前。

うわぁ………人居るし。

最初は暗くてそれが誰なのかはわからなかった。

ただ２人居て、キスをしてるってことだけはすぐに理解出来た。

走ったせいで震える膝を押さえて、途切れる息を整えながら２人の足元から少し視線を上げた。

……………やべぇ。

目が合った、キスをしてる隆二と。