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「隆二、」
「ん？」
「ごめんね、ずっと会えなくて。」
「ううん、大丈夫だよ。俺だって会える時間作れなかったし、お互い様でしょ。」
「うん。」
「でも…………今日だけは絶対会いたくて。」
「明日が大会だから？」
「うん。直接言いたかった………頑張れって。」
「ありがとう、隆二。」
「あー、でも、なんかごめん。」
「なんで？」
「んー…………こんな酔っぱらい、やだよね。」
「やじゃないよ？」
どんな姿だって、会いに来てくれたことが嬉しいんだから。
「なんか浮かれちゃった。」
「なにに？」
「やっとAに会えるって思ったら、めっちゃ飲んでた。岩ちゃんなんてドン引きしてんの。もうやめなよーって。」
「そっか………隆二、私も会いたかったよ。」
「うん。」
私から少し体を離した隆二は覗き込むようにゆっくり顔を近づける。
目を閉じると、柔らかく重なった唇。
優しく押しつけあって、好きって気持ちが伝わる温かいキス。
ずっとしていたいって思うけど、ここは人目につく外階段。
「りゅ、うじ………外、だよ。」
「…………うん。」
わかってるのに、お互い終わらせられない。
少しずつ隙間をつくり始めたふたつの唇がリップ音を鳴らす。
背中を這う隆二の手にも力が入ってきて、薄く開いた隙間から舌が絡みついた。
「………はあっ、ねぇ……」
つい漏れた私の声と、隆二の荒くなった息が体を熱くした。
キスに夢中になった私と隆二はもう、ふたりだけの世界。
だから通りを行き交う車の音も人の足跡さえも私たちの耳に届きはしなかった。
唯一聞こえたのは、
「………はぁ……はぁ。」
隆二とは違う、男の人の途切れ途切れの苦しそうな息づかい。
咄嗟に離れた隆二の唇。
後ろに振り向こうとした私の頭を手でぐっと胸に押しつけて動きを止めた。
そして耳元で呟いたのは、
「……………臣。」
階段の下に居るであろう、彼の名前。
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作者名：taka
| 作成日時：2017年3月3日 22時
