キミと月のブランコ。３ (ページ47)

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「わ、私、前に乗る！」

「えっ、なんで！？臣くん前でよくない？」

「ほら、私が１番に降りるし！そのあと前後とか変じゃん？だからAが後ろに乗って！」

「えー。」

「同じ車内なだけでも失神もんなんだよ、こっちは！」

「私だってそうだし。」

「うーそつけ！もう慣れっこじゃん！」

「慣れねぇわ！」

サロンのシャッターを下ろしながら小声で言い争う私とボンちゃん。

タクシーを呼ぼうとしたら、＂俺、下に待たせてるから。＂って臣くんが一言。

結果、私たちは相乗りすることに。

そして席でいざこざを起こすはめになった。

結局ボンちゃんはそそくさと助手席に乗り、私は後部座席で臣くんの隣。

ボンちゃんの言う通り、ちょっと慣れてるかも。

臣くんの隣にいることに。

「臣くん、疲れてます？」

「そんな顔してる？」

ボンちゃんが降りたあと、２人になったら臣くんが見せたふとした顔。

眠そうで覇気がないし、口元も笑えてない。

「仕事忙しいんですもんね。」

「隆二が言ってた？」

「はい。隆二も朝方まで帰れなかったみたいで。臣くんもなのかなぁって。」

「ここ２、３日は早く帰れてるよ。つーか、隆二って呼ぶようになったんだ。」

「あっ…………うん。」

なんか惚気てるみたい。

「なに照れてんの？」

「照れてなんか……ないです。」

「……………今は、そういうの。」

＂無理。＂

って、消えそうな声で囁いた臣くんは、窓の縁に腕を乗せて手の甲で口元を覆った。

「臣くん？」

「ん？」

「大丈夫？」

「大丈夫じゃないって言ったら？」

「あー、えっとー。」

どうしたらいいんだろう。

彼氏なら、抱きしめたり出来るけど。

そうじゃない人には、何をしてあげたらいい？

横顔を眺めながらそんなことを考えていたら、ちらっと私を見た臣くん。

「冗談。なんでもねぇよ。」

そう言って、私の頭をポンと撫でた。

「サロンにまた来てくださいね。疲れ、取れますよ。」

「だな。俺もハマったかも、ゴッドハンドに。」

純粋に、その言葉は嬉しかった。