キミと月のブランコ。３ (ページ35)

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35～side 剛典～ページ35

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「で、臣さん。熱って？」

収録が終わって楽屋に戻り、すぐに臣さんに食らいつく俺と隆二さん。

「臣がなんで風邪引いてること知ってんの？」

バッグから携帯を取り出した隆二さんは画面を見て＂やっぱり。＂と肩を落とした。

きてないんだ、連絡が。

「今日エステ行ったから。」

えっ！？エステって！？

恐る恐る隆二さんに目を向けると特に驚くこともなく平然としてた。

「それで？」

「ぼーっとしてんなぁって思ってたら顔熱かったから。今頃熱上がってんじゃねぇかって思っただけ。」

どうしよう………話に付いていけねぇ。

今やAちゃんは隆二さんの彼女なわけで。

俺より、きっと千夏よりも、Aちゃんのことを分かってるし知ってるんだと思う。

いつも近くにいた俺たちからAちゃんが少し遠くなったような気がして、正直寂しい。

娘が嫁にいくような、そんな気分。

子どもは男がいいな、千夏さん。

「顔熱かったってさぁ、なにしたの？」

タイムスリップしてたら隆二さんはまたあのヤバい顔で臣さんを睨んでた。

出たよー、元ヤン今市。

おっそろしぃ。

「別になんもしてねぇよ。」

「…………二度と触んなよ。」

ヤバい顔でヤバいほど低い声でそう言った隆二さんは荷物を持って１人楽屋を出ようとする。

「隆二さん、打ち上げは？」

慌てて引き止めようと声をかけたら振り向きもせずに＂ごめん、俺パス。＂と言って出ていった。

「臣さん、これ以上怒らせたらマジで殴られるよ。」

呆気にとられてそんな事を呟いた俺に臣さんは怖気づいてもなくて。

「…………羨ましいんだよ、あいつが。」

ふと見た臣さんは、物悲しげに微笑んでた。

「彼女と上手くいってないの？」

「そもそもあいつは俺のことなんか見てねぇよ。あいつが好きなのは……三代目の臣くん、なんだよ。」

＂名前だけがひとり歩きしてんの、俺は。＂そう言い残して、臣さんも帰っていった。

いくらピラミッドの頂点に立ってスポットライトを浴びたって、満たされないこともある。

心から自分を必要としてくれて、愛してくれる人にそばにいて欲しい。

俺たちだってひとりの男として、生きていきたいんだ。