キミと月のブランコ。３ (ページ25)

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「なんだろうなぁ……自分を見つめ直したい時、かな。どうしたらいいか分からなくなって、投げ出したくなった時とか。」

「隆二さんも、あっ……隆二もあるんだ、そう思う時が。」

一瞬だけ眉間にシワを寄せて、すぐに微笑んだ隆二さん。

一語一句聞き逃さない。

「あるある。こう見えてけっこうデリケートだからね俺。」

「へぇ、全然そう見えない。」

「こらっ。」

口をムッとさせて、怒ったフリをする。

なにそれ、可愛い。

ムッとしたと思ったらまた、ふにゃっと笑って。

コロコロ変わる表情のように、感情にも変化があって。

楽しい時、悲しい時、寂しい時、幸せな時。

隆二さんの胸のうちを自然に読み取れるように、

心に寄り添える、そんな存在に。

私はなっていきたい。

「私はよく海に行きます。」

「海？」

「うん。現実から逃げたくなったら海に行って。気が済むまで、ぼーっとします。」

「海かぁ。俺もよく行ったなぁ。」

「いいですよね、海って。波の音を聞いてるだけで、嫌なことも全部流されてく気がして。でも帰りはちょっと現実に戻って、また悩んじゃったりするんですけどね。」

＂意味ないの！＂って笑いながら隆二さんに目を向けたら、予想外の表情をしてた。

笑ってくれるかなって思ったのに、真剣な表情で。

「おいで。」

そう言って繋いでた手を私の頭に添えて、肩に引き寄せた。

何も言わずに、ただ髪を撫でてくれて。

優しいその手つきに、涙が出そう。

穏やかな、温かい涙が。

隆二さんが隣に居てくれるだけでいい。

言葉なんていらない。

お互いの体温を感じながら同じものを見ていられるだけで、こんなにも幸せな気持ちになれるんだから。

だけど隆二さんは言葉を大事にする人。

「俺がいるから。」

いつだって、ストレートに伝えてくれる。

胸が苦しくなるくらいに。