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思ったより早めに帰ったお偉いさん。
私の念が強すぎたか。
急いで帰る支度をして隆二さんの電話を鳴らす。
すぐに繋がって、電話をしながらサロンから外に出た。
「どこに居るんですか？」
「すぐ近く。あっ、そこでちょっと止まって！」
「ここで？」
サロンの目の前で足を止めた。
なんだろう。
「そのまま上向いて。」
「上ですか？」
言われた通りに顔を上に。
「空見ちゃってんじゃん。もうちょい下だよ。」
上げすぎた。
「もうちょっと。あー、ストップ。」
私は操り人形か。
「なんですか？なんか恥ずかしいんですけど。」
「見えない？」
「んー……。」
「居るでしょ？髭の人が。」
髭の人………髭の人。
「あっ、居た！」
通りを挟んだ向こう側のビルの２階。
カフェの窓際に座る隆二さんが、携帯を耳に当てながら手を振っていた。
目が合った瞬間、お互い笑顔になった。
「すぐ出るから、待ってて。」
「私がそっちに行っていいですか？」
「いいよ。待ってる。」
「一旦切りますね？」
「うん、気をつけておいで。」
電話を切って横断歩道を早歩きで渡った。
隆二さんのそばに早く行きたくて。
やっぱり隆二さんには髭がないとね。
すぐに私が見つけられるように。
息を整えて席に向かうと、隆二さんはテーブルに肘を付いて親指と人差し指で顎を撫でていた。
「お疲れ。」
私を見つけて、にこっと笑う。
どんなに疲れていてもその顔を見たら、一瞬にして吹き飛んじゃう。
なによりも、癒される隆二さんの笑顔。
この人になら、心も体も操られたっていいかなって思う。
いつまでも、魔法にかけられていたい。
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作者名：taka
| 作成日時：2017年3月3日 22時
