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「もっとこっち。」
ため息混じりにそう言った隆二さんは腰に腕を回してぎゅっと抱きついてきた。
脚の間に私の脚を挟んで。
「もう仕事行きたくねぇ。」
って頭上で呟く。
見上げたら凄く顔が緩んでた。デロ〜って。
いろんな表情を見せてくれる隆二さんに胸がキュンとする。
笑った顔が可愛いくて、一番好き。
「なに笑ってんの？」
視線を下げた隆二さんは私の笑顔に気づいた。
「デレデレしてるから。」
「いつ隆二って言ってくれんのかなぁって思ってたら、さっきのでしょ？」
「ちょっと狙っちゃった。」
隆二さんにも胸きゅんして欲しくて。
見つめ合って自然と縮まる２人の距離。
唇が触れる寸前の虚ろな目にまた胸は高鳴る。
やっぱり隆二さんには勝てそうにない。
２人で過ごす時間はあっという間に過ぎて、隆二さんは仕事に向かう。
ネックレスと時計を身につけて、靴を履いたら振り返る。
「来て。」と小さく手を広げて。
次に会える日まで、この温まりを忘れないように。
体に染み込ませたくて、隆二さんに抱きつく腕に何度も力を込めた。
「寒いから中に居な。」
そう言われたけど、永遠のお別れのような寂しさに襲われて階段を降りていく隆二さんを玄関の前で見送った。
柵に身を乗り出して後ろ姿をしつこく眺めて。
数歩進むごとにこっちに振り向く隆二さんに手を振って。
呆れられちゃうかもしれないけど。
姿が見えなくなっても、雪の上に残る隆二さんの足跡を一つ一つ見ていた。
家から離れるにつれて歩幅が小さくなってた。
隆二さんも離れ難く思ってくれてたのかなって、確信もないのに嬉しくなった。
この恋が私と隆二さんにとって、最後の恋でありますように。
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作者名：taka
| 作成日時：2017年3月3日 22時
