キミと月のブランコ。３ (ページ2)

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視界に入った私のアパート。

開いたドアを見ながらしばらく動けずにいた。

これを降りたらもう、さようなら。

分かっていたのに、寂しい。

「お客さん、着きましたよ？」

ドライバーさんの少し迷惑を訴えるような声がして、＂すいません降ります。＂と謝って隆二さんの手から自分の手を離した。

そしたらすぐに伸びてきた手が、ぎゅっと私の動きを引き止めた。

「降りて待ってて。」

「えっ？」

「俺も降りるから。」

「お金……」

片手で財布を出そうとすると、＂いいから。＂と私をちょっと押す。

言われるがまま外に出るとすぐに会計を済ませて降りてきた隆二さん。

手に息を吹きかける私を見て困った顔をしてる。

「……寒いよね。」

と、眉を下げて苦笑い。

「家に入りませんか？」

「………ごめんね、そういうつもりで降りたわけじゃないのに。」

「隆二さんだって震えてますよ。中で温まりましょ。」

「うん。」

家に誘ったはいいけど、サロンの個室とは違ってなんだか緊張。

「上着、干しておきますね。」

「うん、ありがとう。」

玄関で濡れた上着を受け取ってリビングの窓にハンガーで吊るした。

落ち着かない私は洗面所からタオルを持って隆二さんに渡して、次はどうしようとアタフタ。

「あっ、ストーブ。すぐつけるんで適当に座っててください。」

「Aちゃん、そんなに気遣わなくていいよ。」

髪をタオルで拭きながらリビングに入って来た隆二さん。

「そんな気遣ってるわけじゃ。おもてなしですよ、おもてなし。」

その姿を見れなくて電気ストーブの前にしゃがみコンセントやら電源を入れて、普段はしないのに入ったか確認までして。

次の行動を考えていたら上からバサッと降りてきたバスタオル。

「Aちゃんも拭かないと。」

「あっ、」

「風邪引くよ。」

そう言って隆二さんは後ろにしゃがんで髪を拭いてくれた。