キミと月のブランコ。３ (ページ1)

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改札を出たら外は大粒の雪が白い世界を作っていた。

「「うわぁー。」」

予想外の大雪になってた。

「歩いて帰ったら風邪引きそうですねこれ。」

「だね。今日はタクシーで帰ろうか。」

「はい。」

………やだな。

一緒に居られる時間が短くなっちゃう。

口に出せないワガママをグッと飲み込んで、隆二さんの後に着いて向かったタクシー乗り場。

案の定、この大雪のせいで長蛇の列が出来ていた。

雪を遮る物もない行列の一番後ろに隣同士で並ぶ。

傘くらい買ってくれば良かった。

シンシンと降り積もる雪。

タクシーの待機列には一人で体を震わせる人や暖を取るように寄り添う男女の姿。

私と隆二さんの間にはまだ距離がある。

風が通り抜ける距離が。

それが更に寒さを感じさせる原因なのかも。

そんな事を俯きながら考えていたら、

「寒いね。」

そう呟いた隆二さんはそっと手を握ってくれて。

「すげぇ冷えちゃってんじゃん。」

＂大丈夫？＂と心配そうな顔で私を見下ろした後、握った手を上着のポケットに招いてくれた。

それとその腕をさり気なく引っ張られて、一歩だけ横に動いた私の体。

寒さを感じてた体の距離が1mmもなくなった。

ほんのり暖かいポケットの中で、隆二さんの指と私の指が絡まった。

どちらからではなくて、お互いがそうしてた。

震えが止まらないくらい寒いのに心はじんわり。

隆二さんが隣に居てくれるだけでこんなに、こんなに温かい。

タクシーに乗る頃には髪も白く雪色に染まってた。

暖房の効いた車内から外を眺めた。

私は右側の窓から、隆二さんは反対側の窓から。

東京の街に降る初雪を、一緒に。

シートの上で冷えた手を重ねながら。

私のアパートに着くまでとくに会話を交わさず、ラジオだけが流れてた。

口を開けばきっと私は、想いが溢れそうで。

目を合わせることも出来なかった。

窓に反射した隆二さんとも視線は絡まなかった。

隆二さんもひたすら外を眺めてたから。

何を考えているんだろう。

私のことを少しは考えてくれてますか？

隆二さん。