キミと月のブランコ。 (ページ9)

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9～side 剛典～ページ9

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「コーヒー、どうぞ。」

「うん、ありがとう。」

エステを終えて、フカフカのソファーに深く腰を沈める。

Aちゃんが淹れてくれたブラックコーヒーを口に含むと、眠気で下がっていた目尻が自然と上がる。

エステの後に仕事がある時は、この苦いブラックコーヒー。

仕事がない時は、リラックス効果が高い色んな種類のハーブティーをその日の気分に合わせて。

体も心も、このサロンに来れば疲れが一気に吹き飛ぶ。

俺の、癒しの場所。

ここを紹介してくれた千夏には本当に感謝。

敏感肌の俺は疲れが肌にすぐ出るタイプ。

口元なんかは特にすぐ出来る。

だけど、Aちゃんの施術を受けるようになって驚くほど改善された。

化粧水やらパックの効果もあるんだろうけど、滑らかに肌の上を滑るあの柔らかい指先が本当に気持ち良くて。

俺の中でAちゃんの指先は、神。

いや、マジで………ゴッドハンド。

最近俺と同じようにニキビに悩んでいた隆二さん。

男の俺から見ても綺麗な肌に、突如現れた大人ニキビ。

鏡の前で必死に潰そうとしてるから、誘っちゃったよねぇ。

今日から隆二さんもモチモチぷるぷる肌……のはずだったのになぁ。

同じ日にしちゃったもんだから、ゴッドハンドにはあり着けず。

ごめんね、隆二さん。

「あっ、岩ちゃん。もう終わってたんだ。」

しばらくして個室から奈央ちゃんって子と出て来た隆二さん。

今起きました～みたいな寝起き顔。

そして、テカリ顔。

いや、テカリは違う？潤いかな？

俺もなんだろうけど。

「どうだった？初エステ。」

「めっちゃ気持ち良かったわ。ソッコー寝たし俺。」

そう言いながら向かいのソファーに腰を下ろした隆二さんはデカい欠伸を一つ。

「やばいねぇ、マジで。」

欠伸のせいで浮かんだ涙を指で擦りながら隆二さんは満足そうにそう言った。

連れてきて良かった。