キミと月のブランコ。 (ページ31)

今日:17 hit、昨日:15 hit、合計:1,438,905 hit

31 ページ31

.

「古い角質落としていきますね。」

「はい、お願いします。」

洗顔を終えてベッドに横になった隆二さんの顔にクリームを塗り込んでいく。

ニキビに悩んでるなんて言っているわりには、皮脂が多く出てるわけでもなく綺麗な肌。

人前に出る仕事をしてるから、それなりに手入れはしているんだろうけど。

何時間もかけてパックや美顔器でいい状態を保ててる女からしたら、男の人の自然な美肌は羨ましい限り。

「隆二さん、眠くなったら寝て下さいね。」

目尻が下がり始めた隆二さん。

呼吸もゆっくりと大きくなって、今すぐにでも眠れそう。

「ううん、今日は寝ない。」

「疲れてるんじゃないですか？」

「これから癒されるから大丈夫。」

「ほんとに？この後はお仕事ですか？」

「うん、仕事。だからさ、その前にたっぷり癒してよ。」

「………頑張ります。」

プレッシャーだな、それ。

「それにさぁ、寝るのなんてもったいないじゃん？」

「そうですか？アロマも焚いてるし気持ちよく眠れません？私なんて練習台になる時はいつも爆睡ですよ。」

「確かに、アロマってやばいよね。初めて来た時めっちゃ寝たもん俺。」

「それなら、今日も。」

「寝ーなーい。せっかく話せるのに、寝たらもったいないでしょ。」

「………ならせめて、目は閉じてもらえませんか？」

「えっ、閉じたら寝ちゃう。」

「でも、オイル垂らすし………」

それに下からのその視線に耐えられそうにありません。

天井を見つめる真っ黒な瞳が、時たま上を向く。

私は肌を見てるつもりがついついその瞳に引きずり込まれて、視線が交わる。

一度交わった視線はなかなか逸れない。

そんなに見つめられたら、心臓止まりそう。

まだまだ生きていきたいのでお願いです、どうかその瞳を瞼の裏に隠して下さい。