キミと月のブランコ。 (ページ30)

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「そういうもんなの？カッコよければよくない？」

「そもそもタイプじゃないんです。可愛い系は。」

「可哀想に、岩ちゃん。」

「私、本当に隆二のこと大好きで……隆二には彼女出来て欲しくないんです。みんなの隆二でいて欲しい。」

「………うん。」

「隆二に彼女なんか出来たら、私生きていけないですよー。」

想像しただけで絶望したような顔の奈央ちゃんは、そのまま個室に入っていった。

普段静かな奈央ちゃんが熱く語ってくれたのは嬉しかったけど、なんだか複雑な気持ち。

ファンの子からしたら、私はズルイんだろう。

隆二さんを独占するなんて、ファンを敵に回すことなんだ。

あっ、独占なんて……気が早い。

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「こんにちは。」

「こ、こんにちは。お待ちしておりました。」

「楽しみにしておりました。」

にこりと爽やかに笑う隆二さん。

予約の時間より少し早めにサロンへ入って、受付で待つ私の元へ胸の前で手を振りながら歩いて来た。

その姿を見たら、またあの言葉を思い出して。

妙に緊張した。

個室まで歩いている間も後ろを歩く隆二さんから視線を感じて振り向くと、バッチリ合う目線。

「俺の名前は？」

なんて突然聞いてきた。

「今市隆二さん。」

って答えれば、にこーっと笑顔になった。

俺のこと知って欲しいって、名前から？

もう飽きるほど聞いたから、忘れられません。

やっぱり面白いな、ってジッと見つめて気づいた隆二さんの変化。

頭から顎までが金髪になっていた。

「隆二さん、染めたんですね。」

「気づくの遅っ！」

恥ずかしくて、下ばっかり見てたから。

「似合ってます、その色。」

「マジで！？本当は髭剃っちゃおうかと思ったんだけどさぁ。」

「でも、剃ったら隆二さんじゃなくなっちゃう気もします。」

「俺も、そう思った。髭の人って覚えてくれてる子がいるからね。その子がいつでも思い出してくれるように、髭は残しておくよ。」

ゆっくり近付いて来た隆二さんは私の頭に手を乗せて、＂ねっ、Aちゃん＂と優しく微笑んだ。