キミと月のブランコ。 (ページ2)

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「棚に乗せましょうか？」

私がそう声をかけると、＂えっ、あー。＂と荷物を持ち上げた。

渡してくるのかと思いきや、彼は突然立ち上がり私を見下ろした。

「俺乗せるんで、ちょっといいですか？」

自分でやる、と。

「あっ、嫌ですよね。他人に触られるのとか。」

私はあまり気にしないけど、そういう人も居るよね。

「えっ！？いや、そうじゃなくて。」

話しながら席を立つと、彼は荷物を棚に乗せながらまた私を見下ろす。

スラッと伸びた腕には程よく筋肉が付いていて、思わず目を奪われた。

脚も長く細く、抜群のスタイル。

「これ、重いから。触られたくないとかじゃないんで。」

「あっ、は、はい。」

肉体美に夢中になっていた私の意識は彼の声で引き戻された。

「わざわざ、ありがとうございます。」

そう言った彼は、キャップとマスクの間から覗く目をキュッと細めた。

よく表情は分からないけど、きっと笑ってる。

キリッと奥行きのある目を三日月のように柔らかいカーブを描きながら、笑ってる。

優しい人なんだろうな。

そう、思った。

今度こそ落ち着いて座れると脚を伸ばし、もう一度イヤホンを耳にかけた。

小さなテーブルに置いた携帯を手に取ると、またもや私のブレイクタイムを邪魔する声。

「あっ、それ。」

「はい？」

「それ、その曲。」

彼は堂々と私の携帯を覗く。

プライバシーという言葉を知ってますか？

めっちゃ見てる。しかも距離が近い。

咄嗟に体を離し、携帯も通路側へ傾けた。

「あっ、ごめんね。勝手に見ちゃって。」

私の動きに自分の行動を反省した彼は背もたれに体を預け自身の携帯を手に取った。

「い、いえ。すいません、私もなんか……超拒否っちゃって。」

「ううん、俺が悪かったよ今のは。」

「すいません。」

「あっ、ほら。見てこれ。」

彼の方に顔を向けると、今度は自分の携帯画面を私に見せてきた。

「あっ、同じアルバム。」

画面には、私がお気に入りのアルバムが映し出されてた。

「好きなんだよねぇ、Bruno Mars。」

彼はそう言いながら、私を見てまた笑った。