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「A、気を付けて帰るんだよ。」
「送ってくれてありがとうパパ。」
「可愛い娘のためだからな。気にするな。」
「………娘。」
「これ、母さんからだ。新幹線の中で食べなさい。」
「うん。ねぇパパ……お母さんの事、よろしくお願いします。」
「………あぁ。」
作り笑いを浮かべたパパから受け取った紙袋。
中にはお母さんが握ったおにぎりと、ペットボトルのお茶が入っていた。
早く、東京に戻ろう。
足早に乗り込んだ新幹線。
チケットで座席を確認しながら細い通路を進む。
「７のD。」
通路側か。
携帯とイヤホン、それに紙袋だけを座席に残し荷物を棚に置いた。
ホームに鳴り響く出発の汽笛。
ゆっくりと新幹線は動き出した。
私と家族の心も遠ざけるように、ゆっくりと。
「７のE……E。」
小窓から見えたパパの姿を目で追っていたら、背中から聞こえた小さな声。
座席を探してるようだ。
７E………それは私の隣。
「ここ、ですよ。」
後ろに振り向きそう伝えると、立っていたのは緑と赤のラインが入ったキャップにマスクをした男の人。
芸能人気取りかよ、なんて思った。
でもそのキャップ、オシャレで可愛い。
「あっ、どうも。失礼します。」
私の横を通り過ぎ、窓側へ窮屈そうに進む彼。
大きなカバンを太股の上に乗せ、私と同じように携帯とイヤホンを取り出した。
やっと座れた私はほっと一息。
東京までは約２時間。
一眠り出来そうだなと、イヤホンを耳にかけお気に入りの曲をリストから選ぶ。
ちょっとしっとり系で癒されよう。
曲が流れる前に、それは聞こえた……。
「んー、足伸ばせねぇか。どうしよ……。」
隣の彼が荷物の置き場に困ってる。
腿に乗せたり、足元に置いたり忙しない。
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作者名：taka
| 作成日時：2017年1月19日 20時
