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慌てて緑ちゃんに乗って隆二が向かった先へ走り出した。
「……やっぱり。」
走っていた隆二が立ち止まったのは、私の家の前。
上を見上げて動かなくなった。
たぶん、私の部屋を見上げてる。
ストーカーみたい。
「隆二ぃ!」
「A!」
少し離れたとこから声をかけると「Aー」と泣きそうな声を出して駆け寄ってきた。
ブレーキをかけて止まった私の手を握った。
「どこ行ってたんだよ。」
「コンビニだけど……隆二こそ何してるの?」
「何じゃねぇし。起きたら居ないから……心配したんだろ。帰ったのかと思って……」
「私の荷物あったでしょ?置いて帰ったりしないし。」
「あー、そっか。忘れてた。」
「帰ろう?」
「うん、帰ろ。」
安心したのか笑顔に戻った隆二は荷台に跨った。
「なんで隆二が後ろなの!?漕がないの!?」
「漕がない!だってここまで走ってめっちゃ疲れたもん俺!誰かさんが勝手にコンビニなんか行くからー、俺走らなきゃいけなくなったー!」
「勝手にじゃないからね!?一応声かけたけど起きないんだもん!私この坂頑張って上ったんだからー!漕いでよ!」
「もー、わかったよー。」
緑ちゃんのサドルに跨った隆二。
「………ぶた!」
そう言って、乗れと顎で荷台を指した。
「また臣さーん!?」
出たよ、隆二の小芝居。
「似てたっしょ、今の!」
「んー、イマイチだったかなぁー。」
「俺の名前ムダに使うよね!?」
「なにかと使えるよ、今市さん。」
「言っとくけど、Aだって今市になるんだかんね?」
「う、うん。」
嬉しくて、ニヤニヤしちゃう。
「A………ニヤニヤしてないで早く乗ってくれる?」
そんなこと言って……
緑ちゃんに乗った隆二だって……
すんごくニヤニヤしてるじゃん。
「う、うん。」
いつか隆二と同じ名前になれる日を、私は楽しみにしているよ。
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作者名:taka | 作成日時:2016年8月23日 18時